第36章 休暇
「キレイ……それにサイズもぴったり。素敵なお土産をありがとう」
左手の薬指にはめられた指輪を空にかざしキラキラとさせながら信長にお礼を伝えた。
「………ああ」
「ふふっ、綺麗だね。これダイヤ?ダイヤの指輪なんて初めて。大切にするね」
(誕生日でもないのに嬉しいな)
なんてこの時もまだ私は思っていて……
「おい貴様…その指輪の意味、分かってるか?」
「え?」
綺麗な指輪にうっとりしている私とは打って変わって、信長はなぜか訝しげに私を見つめている。
「えっと、指輪の意味?」
「ああ、」
「宝石の意味ってこと?」
花言葉の一つも知らないのに、石はもっと分からない…
「……ごめん、ダイヤの石言葉は分からないから調べておくね」
(そうだよね。せっかくこんなに素敵な指輪をくれたのに…あっ!)
「そうだ、待ってて、今スマホで調べるね」
今すぐにでも調べたほうがいいと思った私はスマホを取りに戻ろうと立ち上がった。
「阿呆っ!俺は石の言葉など興味はない」
信長は、私の手首を掴んで私を止めた。
「え?…じゃあ」
(何の意味?)
「セナ、俺と結婚しろ。この指輪は、そう言う意味だ」
信長は私を見つめて、真剣な顔でそう言った。
「………っ、けっ、けっ、結婚っ!」
「そうだ」
驚いてどもる私に半ば呆れ顔の信長の言葉を確かめるように薬指を見れば、どうして気が付かずにいられたのか?その指輪は確かにエンゲージリングの様相そのもので…
「……っ、これっ、エンゲージリング?」
「だから、そうだと言ってる」
「でっ、でも私……って、わっ、わっ、わっ!」
立ち上がった信長から逃げ腰になった途端、足は踏み場を無くし、プールの上に……!
「セナっ!」
信長が掴んでいた私の手首を咄嗟に引っ張ってくれたけど……
ザバッーンッ!!!
2人でそのままプールの中へと落ちて行った。