第4章 ケイティの部屋
顔が綺麗とか、スタイルが良いとかそんな事じゃない。
「.........この子、信長ちゃんのファンなんだわ」
思わず呟くと、
「世の中の女性殆どが社長のファンなんじゃないですか?」
秀吉ちゃんは私の言葉に呆れたように答えた。けど私には分かる。
「走り方が、似てる」
何度も彼の大会に足を運んだ。その当時から彼にはファンの子達がいたけど、彼の両親が見に来ることは一度もなかった。だから、私がお弁当を持って応援に行くたびに嫌そうな顔をして.....でも、残らず食べてくれてた。彼がまだ、彼のままでいた頃だ。
スカウトしに行った子は18歳。
当時の信長を知ってたとしても小学生だったはず。でも間違いない。この走り方は信長を意識してる。
嬉しかった。
私以外にも、本当の彼を知っている子がいる。そしてそれを偶然彼が見つけてスカウトしたいと、初めて彼自身で動いた。
だから、彼が私に彼女のマネージャーをして欲しいと頼んで来た時、二つ返事でオッケーをした。
過去に。私がマネージャー業をしたのは信長だけ。敵だらけの彼を支えられるのは私だけだったから。
会社が大きく成長してからは、彼は社長業と学業に専念する事にした為、私も父親の後を継いで織田プロの顧問弁護士となり、彼を支えていた。
初めてセナに会ったのは、彼女が織田プロと契約する為に本社を訪れた時。
彼が見出したセナは、何にも染まってなくて真っ直ぐで、その華奢な体一杯に信長が好きだと言っている様な子だった。
危うさは感じていたけれど、信長も彼女に執着していたから、少し様子を見ようと思っていたのに、
「思った以上に早く行動に出たわね」
「誰がですか?」
「二人ともよ。信長ちゃんはあー言う奴だけど
、セナは、胸に秘めるタイプだと思ってたのに、案外身を焦がすタイプだったわね」
これが奇跡と出るか、破滅と出るか。
私は、奇跡が起きるんだと思いたい。
「暫くは、二人を見守ることにするわ。秀吉ちゃん、あなたも覚悟を決めなさい」
秀吉ちゃんのお腹をグーで殴ると、想像以上に硬くて萌えた。