第35章 収束
「んぅ..」
強引なのに優しいキス。
触れ合い不完全燃焼な私の体はあっという間に熱くなって彼の舌に翻弄されてしまう。
「んん……っ、ここ外っ……」
建物からは離れた所にあるけど、滑走路の横のこの敷地内をなんて言うのか分からないけど働くスタッフさん達はたくさんいるのに……!
「嫌なら振り解けばいいだろう?」
「ふっ、……っん、無理……っ」
だってバッグを持ってるから両手が塞がってる…
「ならば俺もやめてはやれん」
「っ、…んん」
いじわる全開だ!
「っん、………ん」
もうこれはスマホを渡すまで止めるつもりはないのだと、遠慮なく口内を探り刺激を与えてくる舌の動きが伝えている。
「……っ、分かったから…離し…んん……!」
絶対に聞こえてるはずなのに、信長は私の顔をさらに上に向けて容赦なく口を塞いだ。
(足の力…抜けちゃう…)
立っていられないほどの浮遊感に襲われた時、やっと彼は私の唇を解放してくれた。
「………っ、いじわる」
はぁはぁと息を乱しながら仕方なくスマホを渡すと、彼はスマホを私の顔に向けて簡単にロックを解き画像を消した。
(あぁ…レア写真さん、さようなら……)
心の中で涙を流しながらお別れを言っていると、信長はベルを呼んだ。
「そんな悲しそうな顔をするな、ほら」
私の手の上にスマホを返してくれた信長は、しゃがんでベルを抱き寄せた。
「……?」
何故か二人してこっちを見ている…?
「……っ、あっ、えっ、撮ってもいいの?」
もしかして、撮らせてくれるって事!?
「そんな顔をされたら後味が悪い。ベルと俺の気が変わらないうちに早くしろ」
「う、うんっ!」
たまにはごねてみるもんだ。
滑走路近くの濃厚キスは気絶しそうなほど恥ずかしかったけど、こんな良い事があるなんて…!
「じゃあ撮るよ?」
本当にさっさと気が変わってしまいそうで、素早くスマホを2人に向ける。
(ふふっ、飼い主に似るって言うけど、そっくり)
スマホ越しに見る2人は、同じ気品を漂わせて綺麗な顔でこっちを見ている。
あの写真が取られてしまったのはファンとして痛いけど、これは世界に一枚だけの、私だけの特別な写真だ。
カシャっとシャッター音がして、2人の姿が私のスマホに記録された。