第35章 収束
「時間だ。行くぞ」
「うん………って、チョット待って、私は行かないよね?」
さっきから、休暇とか南の島は俺にしとけとか普通に言うからうんって頷いてしまったけど、さっきのは冗談で私はきっとここでお別れだよね?
「何をと呆けた事を言ってる?貴様も一緒に決まってる」
お前何言ってんだ?って顔で見ないでほしい。
寝耳に水とはまさにこの事?
「えっ、本当に私も行くの?」
「だから、そう言ってる」
「だって私、何も持って…」
はっ!そう言えば家を出る時確か…
『何だ、荷物はそれだけか?』
『まぁ、良い。必要なものはあっちで揃えれば良いからな』
って言ってたけどこー言う事……!?
「でででもっ、パスポートは?」
国内ならまだしも海外はダメでしょ?
「俺を誰だと思ってる?」
信長は呆れ顔で笑いながら私のパスポートを見せて来た。
「あっ、それ!」
「冬季休暇の旅行でそのまま俺が預かっただろう?」
「そうだけど…」
海外旅行って、こんな身軽で行くものだったっけ?
スーツケースの中に色々詰め込んでガイドブックを片手に行くものなんじゃなかったっけ?
スマホとほとんどお金の入っていない財布とそれを入れてきたバックだけなんて…大丈夫かな…
「あっちに行けば何でも揃う。貴様は身一つでついて来ればいい」
「そんな…もったいないよ…」
「俺の好きにしたいと言ってる。否とは言わせん」
私の唇をぷにっと指で押す信長はとても楽しそうで、それはそれで一抹の不安がよぎる。
(もしやまた、セクシー系にするつもりじゃ…!)
「いっ、一緒に選ぼうね?」
「それは構わんが、貴様に選択権はないことは理解しておけ」
「うーーー」
ニヤリとする彼にもう降参するしかない。
何も持たずに来てしまった私は全てが現地調達になるのだ。
お洋服はもちろんの事、下着から靴下まで全てを彼に委ねるなんて、それは間違いなく今までの中で一番凄いことになることは決定したわけで…、
観念した私は彼に差し出された手を取り飛行機へと乗り込んだ。
「わぁっ!映画みたいっ!」
手を引かれて乗り込んだ飛行機の中は私の想像をはるかに超えて豪華な内装で…
ベルと市と信長と私だけが乗客だと言う贅沢な空間の中、ハワイまで約7時間の空の旅をみんなで楽しんだ。