第35章 収束
「ふふっ、子供が出来たらこんな感じなのかな?」
川の字で横たわる姿に、未来の私たちを想像する。
パパ(信長)がいて、ママ(私)がいて、その間に赤ちゃんが寝ている。考えるだけで顔がにやけてしまう。
「子供が子どもを産むつもりか?」
信長は鼻で笑って私の頭をくしゃっと撫でた。
「また子供扱いするっ!ちょっと言ってみただけでしょ!」
未来を想像しただけだもん!
「貴様の子なら、男でも女でも素直に育ちそうだな」
「そう?私は…信長みたいになって欲しいよ?」
「女遊び盛んな男にか?」
「もーっ、そこは厳しく躾けるもん!」
「ククッ、怖い母親になりそうだな」
「もーーっ!」
「クゥーンクゥーン(なりそうなりそう)」
「ベルまでやめてー」
2人に揶揄われて赤くなっていると、信長が真剣な顔で私の頬に手を当てた。
「子どももいいが、まだ母親になどならなくていい」
「えっ?」
「貴様を誰にも取られたくはない。暫くは俺だけのものでいろ」
「う、うん」
ものすごい不意打ちを食らってしまい、口から心臓が飛び出そうなほどドクドクとうるさくなった。
「こっ、子どもなんて、私もまだまだだって思ってるよ!ほら私…お子様だし?それに私も信長との2人の時間を大切にしたいし…」
こんなにも自然に子どもの事や将来の話ができて、信長がそう言うことも考えてくれている事が嬉しい。
「そろそろ眠れ、あまり可愛いことばかり言われると我慢が効かなくなる」
「…っ、うん。おやすみなさい」
「おやすみ」
軽いキスがおでこに落ちた。
体を重ねなくてもベルを挟んで手を繋いで眠る夜はとても特別な幸福感で溢れていて、私の中で忘れられない夜の一つとなった。
〜翌朝〜
目覚めれば、信長もベルの姿もそこにはなくて…、行くとすれば思い当たる所は一箇所だけ。
ルームウェアの上に一枚羽織って屋上庭園へと行くと、フリスビーで戯れる2人の姿があった。
「ベル取ってこい」
「ウォンッ!」
信長が投げたフリスビーを、綺麗な毛を揺らしながらキャッチするベル。
何度もそれを繰り返し楽しそうな2人の中には決して入ってはいけないと思った。
それに、陸上をしていた頃の様な信長の姿を久しぶりに見れた気がして嬉しくて、私はそのまま黙って朝食を作りに下の部屋へと戻った。