第35章 収束
「ベルっ!?」
(ドアも開けられるのっ!?)
「そうだ。今夜はベルがいる」
もう少しあっちへ行けと言わんばかりに、パシっとベルの尻尾に腕を叩かれた。
「こうやって、いつも一緒に寝てたの?」
「ああ、そうだ」
信長が布団を少し上げると、ベルは自然にその中に入って頭を出し信長の膝の上に置いた。
「良い子だ」
なでなでと頭を撫でられ、ベルは気持ちよさそうに目を閉じる。
「明日には市とハワイの自宅へ戻る。今夜は一緒に寝てやりたい」
「えっ、もう明日帰っちゃうの?」
(今日来たばっかなのに!?)
「市の仕事をずらして来てる。本来なら奴は今頃春コレの打ち合わせでヨーロッパに向かっている予定だ」
「そうなんだ。わざわざ私の為に時間作ってもらって…申し訳なかったな。……ベルもありがとうね」
撫でたらイヤかな?と思いつつもベルのフサフサな首を撫でると、意外にも目を瞑ったままそれを受け入れてくれた。
「貴様が気に病むことは何もない。全ては俺の責任だ」
「その話はもうおしまいって言ったよ?…けど…じゃあ私は行くね」
家族がみんなハワイに行ってしまい孤独だった信長を、ずっと癒やして支えてくれていたベルとの時間を邪魔したくはない。
ベルもきっとそれを望んでいると思い、布団から出ようとした時、
「どこへ行くつもりだ?」
信長の手に掴まれた。
「え?自分の部屋に戻るよ?」
「ダメだ。貴様もここにいろ」
「でも…」
(ベルはそれを望まないんじゃ…)
チラッとベルを見ると目が合った。
ベルは信長の膝から顔を上げると、私のルームウェアを噛んで引っ張った。
「……っ、私がいてもいいの?」
胸がジーンときて、ベルの口元に手を出すと、ペロッと返事の代わりに舐めてくれた。
「ベルありがとうっ!」
何だか認めてもらえたような気がしてベルに抱きつくと、大きく頭を振られ拒否された。
「あ、ごめん」
調子に乗りすぎはダメらしい。
「ふっ、何をやってる。早く来い」
ベルを間に挟んで信長は私の頭を抱き寄せ寝転んだ。