第35章 収束
「セナ、行ってくる」
チュッと、掠めるだけのキスが落ちた。
「……っ、」
本来なら人前でキスは禁止だけど、心配するなと私を落ち着かせる様なキスだったから、逆に安心感をもらってしまった。
「行ってらっしゃい。ここで、ベルとここで待ってるね」
「ああ、すぐに戻る。これが終われば休暇だ。俺に抱かれる覚悟を決めておけ」
いつもの自信に満ち溢れた顔で笑うと、信長は市と2人、部屋の外へと出て行った。
「ベル、2人で仲良くお留守番しようね」
「クーン」
寂しそうなベルの頭を軽く撫でてリビングへ行きテレビをつけた。
織田プロの大会議室が映し出されているその画面には、記者達が所狭しと集まっている。
信長が会見を開くだけでもすごいのに、その妹の市までが会見に出ると聞いて、マスコミは興奮気味に信長達の登場を待っている。
「あ、ベル、2人が出てきたよ」
ベルも不安なのか、私に寄り添って2人を画面越しに見ている。
ざわついていた会場が2人の登場で一瞬で静まり返る。
軽く一礼をした2人はこの日、私の事故の経緯を説明し、時間無制限で記者達からの質問に全て答え、そこにいる者全てを納得させる形で記者会見を終わらせた。
そして信長は今回、毛利元就とその会社、そして顕如をこれまで織田プロが受けた様々な件に関しての名誉毀損で訴えたと共に、毛利元就の会社の脱税や顕如の裏社会との繋がりなどを事前に調べ上げ、その関係書類をそれぞれの関係各所に提出。毛利元就と顕如はこれからあらゆる方面から厳しい取り調べを受けることになり、社会的にその立場を追われることになった。
蘭丸君については、
「奴が何かをしでかさん限りは手元に置いておく。あれでも我が社の稼ぎ頭の1人だしな。損害を被った分しっかりと働かせる。それに顕如が動かなければ奴も動かんだろう。余計なことを考える暇などないほどに奴には仕事に専念してもらう」
だ、そうで……、
“社長の、信長様の鬼ーーっ!”と後日叫んでる蘭丸君を見たけど、何だかスッキリとして楽しそうだと伝わって来たから、大丈夫なんだろう。きっと…