第34章 告白
「病院で貴様に初めて会った時も、専属契約をすると言っていた時もまだ知らなかった。だが貴様が俺から逃げて貴様への思いに気づいた後に、ふと貴様の事故の詳しい原因を知りたくなり俺なりに調べた」
そして、私が車に轢かれる原因となった犬がベルであった事を知り愕然としたと言う。
「隠すつもりはなかった。折を見て話そうと思ってはいたが言えなかった」
信長は握り合っていた片方の手を離して私の頬にあて、愛おしむように撫でる。
「貴様に本気になればなるほど言えなくなった。言えば貴様がまた俺から離れて行くような気がして…」
「信長……」
いつもは俺様で勝ち気な目が不安定に揺れている。
「私がこの事を知ったら、信長のことを嫌いになると思ったってこと?」
「嫌われるならまだマシだ。だがもう逃げられるのはかなわん。あれは中々に堪えたからな」
ふっと笑う顔はやっぱり寂しそうで切なくて、私は大丈夫だと伝える代わりに私の頬を撫でる彼の手に手を重ねて指を絡めた。
「言ってくれればよかったのに。だって私は信長が好きで好きで好きなんだよ?何を聞いても気持ちは変わらないのに…」
遊ばれてもいいって思える程に、出会った頃から信長しか見えてないのに。
「分かっている。だが、貴様の目標であったインターハイの夢を奪い、また新たな道も俺の独占欲のせいで歩みを遅くさせている。貴様を幸せにすると言いながら俺は…」
絡めた私の指を解き、信長は私を苦しそうに見つめた。
「私は…幸せだよ?…確かにインターハイに出られなかった時は悲しくて泣いたけど、その代わりに信長に会えたよ?」
あの日、あの病院の中庭で起きた奇跡と感動を私は忘れない。
「それは違う!俺はどのみち貴様と会うつもりだった。それに、出会った最初の頃の貴様には辛い思いをさせた」
信長の目は、また辛そうな色をともす。
出会った最初の頃とは、専属契約の事を言っているのだろうか?
「…出会った当初は確かに戸惑ったし…辛かったかな?突然キスしてくるし、私の事を好きじゃないのに契約してやるとか言われて…急な大人の世界で…、でも、そんな信長にいつもドキドキして、どんどん好きになって…」
もう自分でもどうにも止められなかった。