第34章 告白
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「俺が貴様を見つけたのは、貴様の友人がSNSに投稿した部活の画像とその練習風景動画だ」
雑誌の記事で読んで知っていると思うが…と言って、信長は私をスカウトしたきっかけから話し始めた。
「うん」
確かに雑誌にもそう書いてあったけど、本人から聞くのは初めてだ。
「何かに心を打たれたことなどなかったが、それを見てピンときた。俺の手で売り出してやりたいと…」
「…うん」
握り合った手の温もりを感じながら、私はただ信長の話に頷く。
「すぐに貴様のことを調べた。まぁ素人動画であまり配慮もしてなかったからな、ユニフォームからすぐにどこの高校かを割り出し学校に問い合わせた」
そして陸上部の支援者だと勘違いした学校側は、信長からの電話に私たち陸上部が次の日から九州のインターハイ会場に行く事を伝え、早くスカウトをしたかった信長は、追うように九州に向かったと言う。
「俺の家族がハワイに住んでいる事は知っているな?」
「うん。ケイティから少し聞いた事があるよ」
「ああ、そうだったな」
そこから信長は、ベルの事について話してくれた。
ベルはもともと信長の妹さんが欲しいと言って飼った犬だそう。けれど飼ったその翌年に信長のお父さんが亡くなり、信長以外の家族は全員、急遽ハワイへ移住したため引き取る事が難しく、信長がそのまま面倒を見ていた。
その妹がベルを引き取りたいと言って来たのが、ちょうど信長が私に会いに行こうとしていた前日で、妹さんも仕事で九州に来るからちょうどいいと言うことになって、信長は予定にはなかったベルを連れて九州へと向かった。
九州に着いた信長は、インターハイの会場近くですぐに妹さんに会いベルを引き渡した。そして急ぐからと妹さんとベルに別れを告げて会場へと向かった。けれど…長年信長と一緒に住んでいたベルの心は寂しかったんだろう。妹さんが車に乗せようとした隙を見て逃げ出し、信長を追いかけたのだ。
この時すでに会場入りして私を探していた信長はベルのそんな行動を知らない。妹さんも必死でいなくなったベルを探している時に、私がそんなベルを見つけ事故は起きた。