第33章 プレス発表会
九州に来た信長は、なぜか愛犬であるアフガンハウンドのベルを連れて来ていた。その理由は書かれていないが、有名人である信長があんなに綺麗な犬を連れて街中を歩けば目立つと言うもの。たまたま信長のファンであった女性がその時撮ったと言う写真が載っていて、そこには確かにあの会場の近くであの時の犬を連れて歩く信長が写っていた。
プロダクション関係者の証言として(多分蘭丸君なんだろう)、信長と愛犬ベルの信頼関係は深く、散歩に行く時も信長はリードを付けたことはなかったらしい。
それは九州に連れて行った時も同じで、そんな犬が見知らぬ土地で迷子になり車道へと歩いて行ってしまった。そしてそれを見た私がベルを助け、代わりに車にひかれてしまった。
「………」
きっと、ここまでは本当のことなんだろう。
でもここから先の内容は…
愛犬が原因で私が事故に遭ったと分かった信長は、直ぐに愛犬をハワイにいる家族に引き渡し、隠蔽を図る。
信長自身が引き起こした事故では無いが、リードもせず外に出していたとあれば、飼い主としての責任に問われる可能性はある。日頃から女性問題やその強引な経営手腕で何かと世間を騒がせているだけに、こんな些細な事も命取りになると知っている信長は、私をスカウトしてプロダクションに引き入れるだけでなく、恋人にして事件を思い出す事がないように見張ることにした。
“何も知らないセナはまんまと信長の策にハマり、信長とのセミヌード写真を雑誌に掲載するほどに今では夢中になっている。
愛されていたわけではなく、利用されていたと言う真実を知った彼女は、それでも信長を愛していると言えるのだろうか?”
「……それでも、愛してるよ。信長を愛してる。好きで、好きで、どうしようもないほど好きだよ」
何度読んでも酷い文章に反論するように、そして信長に伝えるようにつぶやく…
「顕如は、嘘は書かないって言ったじゃん!なのに何で、どうしてこんな嘘を書くの!?」
こんな記事はデタラメだ!
信長を陥れたい顕如の妄想記事に決まってる。
だって証拠を隠したいなら、あの時の、出会った最初の頃のように専属契約のままで良かったはずだもの。