第33章 プレス発表会
「セナっ!」
「ケイティ」
「大丈夫よ。よく頑張ったわね」
大きなストールを私の肩にかけ、ケイティは私の背中をゆっくりとさすってくれる。
「ケイティ、私…」
「とりあえず控え室に行って話しましょう。歩ける?」
「うん」
そのままケイティに肩を支えてもらいながら、私は控え室へと戻った。
・・・・・・・・・・
「どうぞ」
控え室に戻ると、ケイティはスティックのラテをいれてくれた。
「ありがとう」
緊張で氷のように冷たくなった指先を温めたくて、カップに添えた。
「あったかい」
「暫くはさっきの記者達が外にいて出られないから、ゆっくり飲んで温まりなさい」
「うん。……………ねぇ、ケイティ」
「なに?」
「ケイティは、さっきの話…知ってたの?」
「知らないわ」
「そうなんだ…」
その答えに、少しだけホッとした。
「あんたは、もしかして知ってたの?」
コーヒーを入れたカップを手に、ケイティは私の前に座った。
「私も知らなかったけど……ただね、もしかしたらって思う事があって、でも、別に知りたくなかったから、さっきの話で決定打をくらった感じかな…?」
「そう。それは、あんたはさっきの顕如の話を信じるって事ね?」
「うん。この前の撮影の時、毛利さんが言ってたの。顕如は嘘は書かないって。もしかしたら事実をでっち上げることはあるかもしれないけど、私のこの件に関しては過去の事で、作り変えることはできないし、しっかりと調べ上げてるんだと思う」
きっともう、かなり前からこの事を知ってたんじゃないかな。だから蘭丸くんに信長の愛犬であるベルの事を私に話させて、反応を探った。
「一つだけ言っておきたいんだけど、ベルが今社長といないのは、あんたから真相を隠すためじゃないわよ?」
コーヒーカップを握りしめたまま、ケイティは私に優しい眼差しを向けた。
「うん。信長がそんな事するとは思ってないよ」
「じゃあ後は何も私は言えないわね。出張が長引いててまだ暫くは戻らないけど、社長が戻ってきたら二人でよく話すのね」
「うん。ありがとうケイティ」
「…それにしても、今夜から騒がしくなるわよ。それだけは覚悟しておいてちょうだい」
「はい……」