第33章 プレス発表会
「…えっと、中々高校の時の友達と会えないので、南の島にもしまた行けるなら、高校の同級生と行きたいです」
(うう、みんなごめんよー、でもみんなと行きたいのも本当だからね)
「このお茶は、本当に中学生の頃から飲んでいて大好きなお茶で、やっぱり思い出すのは、部活で一緒に飲んだ友達で、彼女達と一緒に飲みたいですね」
(これだって本当だからね)
「CMが決まったと言うか、お話が来た時は、マネージャーに一番に報告しました」
(嘘はついてない。ケイティに一番に話したもん!)
記者から投げ掛けられる様々な誘導尋問(質問)を何とかかわしながら、質問に答えていく。
顕如は予想通り今日も来ている。
大勢のマスコミの中にいても彼は目立っていて、すぐに分かった。
こういう記者たちの質問は順番が決まっているわけではないが、規模の大きい会社から順にしていくみたいな暗黙の了解があり、彼のようにフリーの記者は最後の方に回されてしまうと聞いたことがある。
順番を律儀に待っている顕如にたまにチラッと視線を向けると、そのたびに刺す様な視線が返ってきて、肌がぞくりと粟立った。
やがて記者達からの質問も終わりに近づき誰も手を上げなくなった頃、やはり顕如は不敵な笑みを浮かべながら手を上げた。
「あ、はい。ではそちらの方」
MCが顕如にどうぞと手で合図を送る。
顕如との一対一の戦いが始まった気がした。
「フリーライターの顕如です。宜しくお願いします」
顕如は自己紹介をすると、軽く頭を下げた。
「宜しくお願いします」
私も軽く頭を下げて笑顔を作った。
(大丈夫、何を聞かれても焦らない、狼狽えない)
「セナさんの今日の衣装についてお聞きしたいのですが、その衣装はやはりこのCMの緑茶をイメージして選ばれたんですか?」
「あ…と、そうだと思います」
(あ、しまった!これだと自分で選んでいない事がバレる!)
ストレートに信長との事を聞かれると思っていたから、急に衣装のことを聞かれて答え方を間違えた。