第33章 プレス発表会
「一応MCには、CMに関係ない事は質問しない様アナウンスしてもらうけど、奴らはそれでも動じる事なくあの手この手で聞いてくるから、その時は答えずにいればいいわ」
「……うん。顔に出さないように気をつけないとね」
「そこはそうね。まぁ、無理しなくていいわ」
「ありがとう。出来るだけがんばってみる」
(大丈夫。困った時はこの間みたいに衣装を見て信長の事を思い出すから)
大切な時にいつも衣装を贈ってくれるのは、信長も側にいるから安心しろと言う意味なんじゃないかって…、今回のことで気がついた。
【それでは登場してもらいましょう。第15代目爽やかガールの、春海セナさんですっ!】
MCが私の名前を紹介し、BGMが流れ出した。
「じゃあ、ケイティ行ってきます」
「楽しんでらっしゃい。私はここで見てるわ」
「うん!」
大きく息を吸い込んで気持ちを落ち着ける。
(大丈夫。笑顔、笑顔)
信長から贈られた衣装を少しだけ握りしめて、私は舞台へと出ていった。
登壇してまずは、商品を手に持っての写真撮影。
それがすむと、今回の商品についての感想や、それにまつわる今までのエピソードなどを聞かれ話をした。
中盤になるとサプライズゲストとしてCM監督が登場し、MCを挟んでのトークをしばらくは続けた。
そしていよいよ、最後の質疑応答の時間。
「それでは、質疑応答の時間に移らせて頂きます。お時間の許す限り質問にはお答え致しますが、このCMに関係のない質問はお控え頂きますようお願い申し上げます」
MCがそう言い終わると、記者たちの手が上がった。
「今回のCM撮影は南の島で行われたそうですが、もしまた行くなら、誰と行きたいですか?」
「この爽やか健康茶、よく飲まれていると言うことですが、よく一緒に飲まれてる方は誰ですか?」
「今回のCMが決まった時、誰に一番に報告しましたか?」
様々な質問が上がったが、答えは全て信長につながる様な誘導尋問ばかりで笑えてしまう。
私自身、信長ですっ!って答えたいけど、答えてしまったら最後、どんどん深い質問をされてしまうから、そういうわけにはいかない。