第33章 プレス発表会
2週間はあっという間に過ぎた。
大企業がバックについたCMの制作発表会は、クラブのフロアを貸し切った会場内に予想を上回るマスコミが駆けつけていた。
「セナ、そろそろ時間よ」
「はい」
ミラーをもう一度見て、笑顔の確認をする。
「はいはい。ちゃんと綺麗よ」
ケイティは、そんな私に笑いながら肩をぽんぽんとしてリラックスしろと伝えてくれる。
「うん、ありがとう。はぁ〜緊張する」
さっきも、毛利さんが控え室に連れて来た様々な関係者と挨拶をして笑顔を作っていたから、日々使わない表情筋がピクピクしているのが分かる。
「あんまり緊張すると転ぶわよ?」
「もう、言わないで〜!」
そうじゃなくても今日のヒールはとても高い。
ローヒールが主流の今日で、この高さのヒールを履く事は撮影やランウェイでも滅多にないのに…
「でもさすが社長ね。今日の衣装もよく似合ってるわよ」
ふふんっとケイティは意味ありげな顔で私に笑いかける。
「…っ、うん。私もこれが届いた時にはビックリした。海外にいるはずなのにすごいよね?」
そしていつもサイズはぴったりジャストサイズで、ブランドによってもサイズ感は違うのに、私以上に私のサイズに詳しい信長に感心すると共にやはり恥ずかしくて照れてしまう。(触られ放題だから…)
舞台袖まで移動し、チラッと会場を覗き見た。
「あっ、そうそう、一つ伝えておくけど、多分今日も顕如は来てると思うわ」
「あ、うん」
楽しい気持ちは一転して、気持ちがきゅっと緊張状況に戻って行く。
「出禁にしちゃえば楽なんだけど、それほどの事をまだされてないって言うのもあるし、したとしてもどんな手を使ってでも乗り込んでくるからあまり意味はないのよ」
「何か…また過去の事を聞いてくるのかな?」
「そうね、覚悟はしておいた方がいいわね」
「うん」
覚悟はしてる。だってあの舞台挨拶の時、
『お嬢さん、お前の交通事故には、お前も知らない秘密がある』
彼は何かを知っているみたいだった。