第32章 舶来
「よお、お疲れさん」
「あ、毛利さん、お疲れ様でした」
「モニターチェックしたが、綺麗に撮れてたな」
「あ、ありがとうございます。自分で言うのもなんですけど、本当にお茶の妖精みたいに撮ってもらえて、嬉しいです」
「海のコンディションが良くて良かったな。希望通り今日中に東京に帰れるぞ」
「はい」
ガイドさんも言っていたけど、本日の海のコンディションはここ最近では中々ないほど良かったらしく、波も穏やかで海の色も砂浜の色も綺麗だったそう。
その中で伸び伸びと太陽の光を浴びて浜辺を歩き、時には走る。それは陸上をしていた頃の感覚と少し似ていてとても気持ちよく、伸び伸びと撮影に臨めた。(セリフがないと言うのも最高!)
「お前、陸上やってたんだってな」
「あーーっと、はい」
(もしかして、踏み込んだ内容を聞かれるかな?)
チラッとケイティの方を見ると、スタッフさん達と何かの打ち合わせ中だ。
「んな構えんなって、この週刊誌を読んで気になっただけだ」
警戒する私に証拠品を提示する様に、毛利さんは週刊誌を私の前に出して見せた。
「あー、それ、…私も読みました」
3日前に発売されたその週刊誌には、私の過去の出来事が顕如によって書かれている。
「このライターは俺もよく知ってるが、嘘は書かねぇ、そうだろ?」
「う、…はい。まぁ、大体は本当です」
記事は、信長とセナ (私)がどの様に出会ったかと言う内容で、信長が私をSNSから見つけ出し自らスカウトをする為九州に向かった事や、そこで私が交通事故に遭い病院で出会った事などが書かれていた。
ケイティは、いよいよ動き出したわね。なんて言っていたけど、今回の記事は思っていた内容とは違い、どちらかと言えば私の事をシンデレラストーリーの様に書いている。
交通事故で陸上を諦めた私の前に信長が現れてスカウトし、モデルになり、やがて二人は異性として意識する様になり付き合い出し今に至るみたいな感じで締め括られていた。