第31章 擬似遠距離恋愛
「そうだけど、…いいの?」
「いいも何も、貴様がやりたいと言う事を無碍に却下するわけにもいかん。それに、毛利は危険だがあの仕事は確かに魅了的だ。精一杯、貴様の仕事をしてこい。俺が何があっても守ってやる」
「っ、信長……ありがとう。ううっ…」
じーーーんと心が温まって、涙が自然と溢れた。
「阿保、泣くな。泣いても今は涙を拭ってはやれん」
画面越しの信長は本当に困った顔をしている。
「うん、ごめん。なんか感動しちゃって…だって信長、カッコよすぎなんだもん」
顔も中身も全てがカッコいいなんてもうお手上げだよ。どれだけ好きになっても全然好きが追いつかない。
「ふんっ、そう思うなら態度で見せろ」
少しだけ頬を染めた信長は、そう言うと不敵な顔でこっちを見た。
「…えっ?」
「礼は貴様からのキスでいい」
「…はっ、今?」
「当たり前だ」
「っ、えっと…」
それは、画面にキスしろと言うことでしょうか?
あまりの要求に感動の涙も引っ込んでしまった。
「それは恥ずかしいよ…」
タイミングだって分からないし…
「ならば、もっと恥ずかしいことを強要するが、いいんだな?」
「えっ、もっとって…どうしてそうなるの!?」
と反論しつつも、頭の中では様々なエロい妄想がモクモクと膨らんでいく。
「ふっ、貴様、今いやらしい事を考えたな?」
信長は私の反応を見て嬉しそうに口角を上げた。
「っ、信長が変な事ばっか言うから」
「貴様が早くしないからだ」
「だって…」
「早くしろ」
「……っ」
なぜ既に決定事項になってるんだろう?
でもこれをしないと、本当にもっとエロい事を画面の前でさせられるに違いない。
そんなに嫌なら私も切ってしまえばいいのに、心のどこかではやりたいと思ってる自分もいるわけで…
「こ、これが最初で最後だからねっ!」
「そんな約束はできん!」
「う〜〜〜」
きっと今後も言うつもりなんだと思ったけど、覚悟を決めてスマホを両手で持った。