第31章 擬似遠距離恋愛
「…元気そうだな。敬太郎から色々あったと聞いたが大丈夫か?」
「あ、うん」
やっぱり、心配して連絡くれたんだ。
「あっ、そう言えば舞台挨拶の衣装ありがとう。気に入りすぎて、朝からずっと着ちゃった」
「そうか、気に入ったんならいい。…それにしても、俺がいなくなった途端に色々と問題に巻き込まれるとは…本当に貴様は油断ならん」
「うっ、心配かけてごめんなさい」
舞台挨拶の事は、あんなにも気をつけろと言われていたのに返す言葉もございません。
「謝る必要はないが、また何か仕掛けてからかもしれん、十分に気をつけろ」
「うん。ありがとう」
(信長に抱きつきたいなぁ)
目の前にいるのに、触れる事ができない事がとてももどかしくて、遠距離恋愛の辛さをひしひしと感じてしまう(一日も経ってないけど…)
「あ、あとね、ケイティから聞いたと思うけど、毛利さんの所の飲料のCM…受けたらダメかな?」
ケイティの話を聞く限りダメだろうけど…
「貴様はどう思ってる?」
「え?」
「貴様の考えを先に聞かせろ。それとも、俺がダメだと言えば貴様は諦めるのか?」
信長はそう言うと、僅かに目を細めて私を見つめた。
今日は、よくよく自分の心を試される日だ。でも、意見を聞いてもらえるのはとても嬉しい。少し認めてもらえた様な気持ちになれるから…
「…私ね、信長が私に来る仕事を私に知らせてくれずに断ってるって聞いて、少しショックだったの。あっ、もちろんケイティからその理由も聞いて納得はしてるし、その通りだと思う。でも…信長がいないと何もできないし答えられない状況はやだなと思ったから、この仕事…私は反対されても受けようと思ってる」
信長の目を見ながら話すと、その鋭さに負けてしまいそうだけど、深窓の姫なんて言われたままではいたくない。
私のこの考えを信長はどう思ってる?
自分の気持ちを打ち明けた私は、うかがう様に信長を見つめた。
「ふっ、構わん、貴様の好きにしろ」
「えっ、」
「そんなに驚いてどうした?」
「だって…絶対に反対されると思ったから…」
「変な奴だ、貴様が反対されてもやりたいと言ったんだろう?」
くっと、信長は楽しそうに笑った。