第31章 擬似遠距離恋愛
「やっ!ビデオ通話はダメっ!」
「は?」
「違うの、あの…私も信長の顔見たいけど…」
「けど…何だ?」
「っ、もうお風呂も入ってスッピンだし…」
あまり見られたくないと言うか…
「何を今さら…、俺といる貴様はほとんどがノーメイクでルームウェアだが?」
「そ、そうですよね…」
ああ、こんな所でも女子力の低さが露呈してしまう。
でも言い訳をさせて欲しい!
信長に会えるのは、デートの日を除けばほとんどが夜。仕事から戻った信長はまずシャワーを浴びてご飯を食べて私を抱くというルーティンの為、私は必然的に信長が戻ってくる前にお風呂を済ませておく必要があるんだもん!仕方ないじゃないかぁっ!
「つべこべ言わずにさっさと切り替えろ」
「う、うん」
恥ずかしいけど、信長の顔が見たいのも事実…
その誘惑には勝てずに私は画面をポチッと切り替えた。
その途端にパッと信長の顔が映し出される。
「……っ」
(きゃーー!カッコいい!!)
心は騒がしいどころか羽が生えて飛んでいきそうなほど幸せマックスになる。
「どうした?鼻息が荒いぞ」
「えっ、うそっ!」
気取られない様に抑えていたつもりなのに、鼻から息が漏れてるんだろうか?
恥ずかしすぎる指摘をされた私は慌てて鼻を片手で覆った。
「ククッ、冗談だ。あまりに緩んだ顔が映し出されて、揶揄いたくなっただけだ」
信長は信長で、片手を口に当てておかしそうに笑った。
「もう、いじわるっ!本当だと思ったじゃん!」
実際ちょっとヤバかったし…
「あながち間違いではなかっただろう?鼻息が荒くなる程何に興奮していたのか聞かせろ」
「っ、だから興奮したっていうか、画面に映る信長がカッコ良くて、あとは顔が見れて嬉しかったから…」
一日の疲れなんか、秒で全部吹っ飛んじゃったんだもん。
「……っ、阿保、俺のかっこよさは元からだ。だが貴様の画面映りも悪くない」
信長は少し言葉に詰まって照れると、次は私のことを褒めてくれた。
「あ、ありがとう」
お互いの画面映りを褒め合うなんて、他人が聞いたらただのバカップルだろうか?でも、こんな何気ない会話がとても楽しい。