第31章 擬似遠距離恋愛
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長くハプニングだらけの1日を終えた私は部屋へと戻り、ご飯とお風呂を済ませ、ベッドの上でスマホを握り締め固まっていた。
「今、電話しても良いかな…?」
まずはアジア圏のお隣の国から行くと言っていたし、時差は無いはずだよね?
「でも、まだ仕事中かも…?」
普段だって仕事が忙しくてその日に帰ってこないなんて事も多々あるし…
「うーー、でも話したいよ〜」
離れてまだ一日も経ってないのに、気分はもう遠距離恋愛中。つまりは寂しいのだ…
欲を言えば顔を見て話したいけど、何だかそれも照れてしまって…あえて通話のみにしようと、あとはスマホの画面をワンポチするだけの状態…
「ああダメだ、緊張する〜っ」
実は、あまり信長とスマホで通話をしたことが無い。
日々の簡単なやりとりはメッセージで済ませていたし、一週間以上離れている時も忙しい信長のスケジュールがどうなっているのかが分からなくて、やはりメッセージのやり取りで済ませていた。
もう1年以上も一緒にいるのにこんな簡単な事に緊張するなんて、思わぬ発見だ。
「いや、でも今日はメッセージじゃなくでちゃんと話したい」
意を決して(大げさ?)ポチっとしようとした時、スマホの画面が着信画面に切り替わった。
「えっ、………ええっ!?」
そこに映し出された名前は、織田信長。
「信長からだっ!」
心臓は途端にバクバクして顔が熱くなる。
画面の名前を見るだけでもうこんなにも興奮してしまうなんて…
「……も、もしもし?」
あっ、声がうわずった…!
「ふっ、何だその呆けた声は」
耳に届くのは、大好きな人の低くて優しい声。
「あ、あのね、私も今信長に電話しようって思ってたの。そしたら信長からかかってきてびっくりしちゃって….」
声を聞けた事が嬉しくて、上手く話せない。
「貴様の事だ、俺に連絡するのを躊躇って、画面を睨んでたんだろう?」
「えっ!何で分かるの!?」
もしかして、知らない間に通話になってた?
何もかもお見通しの信長に、見られていたんではと不安になる。
「一緒にいなくても貴様の事は手に取るように分かる。セナ、顔を見て話したい。ビデオに切り替えろ」
ああ、そういう事ね。見られてたわけではって、えっ!今ビデオにしろって言った?