第31章 擬似遠距離恋愛
「そうねぇ、どこまで話したものやらなんだけど、玲衣が怒ってるのはね、玲衣と仲良かった子が蘭丸達に潰されたって思ってるからだと思うわ」
ふぅっと、ケイティはさっきからため息を吐きっぱなしだ。
「あんたと玲衣の間の空き部屋あるでしょ?あそこには玲衣と同郷でまだ10代の俳優希望の男の子がいたのよ。玲衣にしては珍しく姉の様に世話してあげてて、結構大きな仕事が決まり始めてた矢先に、毛利にCMの件で話がしたいって食事に誘われてね、そこにいた偉い人にお酒を勧められて飲んじゃったのよ。それを蘭丸が嗅ぎつけて顕如が記事にして、見事に芸能界から干されたわ。勿論誰かに勧められた事は記事にはなってないから、あの子が勝手に飲んだって形でね。玲衣はそれに激怒して社長にも直談判したんだけど、結局、飲んでしまっ事が事実ならば自己責任だと論破されてね、彼は地元に戻って行ったわ」
「酷い…..」
未成年でお酒はダメって分かってるけど、家でお父さんのビールを少し飲んだってそれは咎められないのに、公の場では許されない。当たり前のことだけど、芸能人というだけで受けるペナルティが重すぎる。
「玲衣は蘭丸を許さないだろうけど、蘭丸がやったって確証はないし、織田プロのアイドルとしての森蘭丸はとても優秀で稼ぎ頭だからね。彼自身には何のスキャンダルもないし現場の評判も良い。やめさせる理由がないのよ」
「そうなんだ」
蘭丸君には、別の顔があるってことなのかなぁ。
「まぁ、蘭丸の事は気にしても仕方ないわ。あの子にも何か言えない事情があるんでしょ」
「…うん。そうだよね」
本当にそう思いたいし、ケイティが軽くそう言ってくれたから、何だか本当にそうだよねと思えて来る。
「ケイティありがとう。」
いつも、”何とかなるわ”ってスタンスで見守ってくれていて本当に心強い。
「お礼はいらないからイケメン紹介しなさいよ」
「あ、その言い方何だか社長にそっくり!」
「えっ、やめてよ!あんな暴君と一緒にされたくないわ!」
「ふふっ、社長も同じ事言いそう」
「もう、やな子ね…」
口は悪いけど優しいケイティは照れながら前を向くと、路肩に止めた車を再び走らせた。