第31章 擬似遠距離恋愛
「…謝る必要ないわ。毎日の様にオーディションを受けても中々受からないんだもの、セナの気持ちは良く分かるわ。反対に、セナの気持ちも聞かずに色々と進めてたこっちにも責任はあるんだから」
優しくそう言ってくれるケイティに心が救われる思いだ。
「ケイティ、大好き」
本当に、ケイティがいてくれなかったら今の私はいない。
「あら嬉しいわ。社長から私に乗り換える?良いわよ?」
「いや、それは無理」
「でしょうね、こっちだってお断りよ。まぁ、CMの件はあんたが出てみたいと思うなら自分で直接社長に交渉してみれば?確かに毛利は危険だけど、やってみる価値のある案件だって事は確かだしね」
「うん。ありがとう。今夜にでも連絡してみる」
もしかしたら阿呆って怒られるかもしれないけど、信長に連絡できる理由ができて密かに嬉しい。
「あ、あと、一つ聞いてもいい?蘭丸くんの事なんだけど…」
「なに?蘭丸と顕如の事?」
「あ、うん。やっぱり知ってるんだ」
「何あんた、今日の事、蘭丸に話したの?」
「話したって言うか、偶然部屋の前で会ってお互いの仕事の事を話した時に聞かれて…」
「なる程、……今日の出来事全てに繋がったわね」
ふぅ〜と、ケイティはわかりやすく肩を上下させてため息をついた。
「あの、…やっぱり蘭丸君が?」
「まぁ、そうでしょうね。多分、社長が海外に行って、あんたが小さなイベントに出てくる機会を狙ってたんじゃない?」
ケイティはちょっと苛ついているけど、あまり動じていないみたいに答えた。
「あの、蘭丸君が顕如と繋がってるのを知ってるに、ケイティも社長も何も言わないの?」
リスクマネジメントだ、コンプライアンスだっていつも言ってる秀吉さんだって黙ってなさそうだけど…
「社長いわく、”弱みを見せたら負け”だそうよ」
「え?どう言う意味?」
「例え蘭丸が顕如と繋がっていたとしても、あの子は嘘の情報を流したりはしない。要は、顕如に握られて潰される様な”弱み”を持っている方が悪いって事」
「なる程…でも、玲衣は蘭丸くん達がありもしない事を平気ででっちあげるみたいな事言ってたけど、それはじゃあ違うって事?」
蘭丸君をよく知ってるわけじゃないけど、あの笑顔や態度は作られたものだとは思いたくない。だから違っててほしい。