第31章 擬似遠距離恋愛
その姿を前にとても言い出しにくいけど…
「話には続きがあってね、その…CMに出ないかって言われて…」
「ああ、飲料のCM?」
CMって言っただけなのに、ケイティにはすぐに何のCMかも分かったみたい。
「やっぱり…本当なんだ」
「えっ、何?はぁー、道混んでるわね」
ケイティはまだ少しイライラしているみたいだ。
「あの、私に来る仕事を、信長が全部断ってるって聞いたけど、本当?」
「……はっ?そんな事誰に聞いたの!?」
ずっと正面を向いて運転に集中していたケイティが、険しい顔でこっちを向いた。
「え、あの…喫茶店で毛利さんに……って、ケイティ前っ!」
混雑の為ノロノロ運転で進む車の前に、急に隣の車線から車が割り込んで来た。
キュッ!!とケイティはブレーキを踏みながらハンドルを切る。
「…運転しながらだと危ないわね、ちょっと待って、今路肩に停めるから…」
険しい顔のまま、ケイティは横道に入り車を停めた。
「…先に言っておくけど、確かにあんたに来た仕事のほとんどを信長ちゃ、社長は断ってるわ」
後ろのシートに座る私に体ごと向けて、ケイティは口を開いた。
「どう、して?」
「どうしてだと思う?」
まるで信長への気持ちを確認されている様に、ケイティは質問を質問で返す。
「どうって…、最初聞いた時は、正直えっ?って思ったよ…?でも、のぶ、社長はすごく心配性で、私の事色々と考えてくれてるって分かってるから、何か理由があるんだろうなって…」
「正解よ」
私の答えに安心したのか、ケイティはふぅ〜っと息を吐いた。
「あんたに色々と仕事が来てるのは本当。でもね、ほとんどがバラエティや情報番組のオファーなの」
「それって…」
「そう、あんたと社長の事を根掘り葉掘り聞きたいのよあっちは」
「そうなんだ…」
「雑誌の撮影みたいに二人の事が評価されるなんてのはレアで、番組に出て質問に答えなければ感じ悪いって書かれるし、答えたら答えたでいい気になってるって次の日はもう大炎上することが目に見えてるわ。だから社長は全て断ってるの。そうでなくてもあんたは思ってる事全部顔に出るしね」
「…っ、すみません。もう少し気をつけます」
これだけ何人もに言われるって事は、本当に気持ちが分かりやすく顔に出てるんだ。