第30章 舞台挨拶
「はっ、そっちか!言葉通りの意味だ。あの信長が惚れ込んで手を出した自社モデルのセナは、まるで深窓の姫君のような扱いだってのはこの業界じゃあ有名だ」
「どう言う…意味ですか?」
「どう言うって、そのままの意味だ。お前、中々仕事決まらねえし来ないだろ?」
「………っ」
いきなりの鋭いツッコミにムッとするも、本当の事だから返す言葉もない。
「理由は簡単だ。お前に来る仕事、全部信長が断ってっからだって、知ってたか?」
「……え?」
確か、信長と私二人での出演オファーは全て断ってるとは聞いてるけど…その事じゃないの?
「何も知らねえって顔だな。まぁ、思ってる事全部顔に出してるようじゃあ、この世界でやってくにはきつい、信長が出し渋ってるってのも納得だな」
いろんな情報や感想が一気に飛び出して来て混乱した。
顔にすぐ出てるから苦労するとは、確か光秀さんにも初めて会った時に言われた。でも…、
「…っ、でも、仕事を断ってるってのは…、社長が所属タレントの事を色々考えてしてくれてる事だと…思います」
そうだよ、もし、本当にもしも信長が私の仕事を断ってるんだとすれば、それは絶対に私のためだ。
自分の事を言われるのは構わない、でも、信長の事を悪く言うのは許せない。
「お前の言う事も一理ある」
息を巻く私に、毛利さんは”まぁそうだな”と言った感じに頷いた。
「じゃあ…」
「だがそれは、そのタレントにとって成長の妨げとなる場合だろ?」
「はい。だから…」
「お前、飲料のCMで〔爽やか健康茶〕っての知ってるだろ?」
私の言葉を遮って、毛利さんは言葉をねじ込んできた。
「…はい」
知ってるも何も、このCMに出た子はみんなその先仕事が増えて順風満帆な芸能生活を送っている。いくつかあるタレントが起用されたいCMの一つだ。