第30章 舞台挨拶
「あの、ありがとうございます」
「……あ?」
「あ、さっきのラテとオーレの違いを教えて頂いて、ありがとうございます」
「あー、大したことじゃねぇよ」
ニカっと男は笑った。
(それにしても…この人とても遊んでそうだな…)
初対面の人に失礼な感想だけど、朝黒く日焼けした肌にピアス、髪は短髪で銀髪、派手な装い…そして何よりもイケメンだ。
「おい、何ジロジロ見てんだよ」
「ご、ごめんなさいっ!」
(怖いっ!)
慌てて目を逸らしたけど、何故か今度は男の方が私をじーっと見ている…
(どうしよう…怒らせちゃったかな…?)
席を立って逃げる勇気もなく視線に耐えていると…
「お前、セナ だろ?」
「……え?」
知り合い?…………な訳ないよね…?
こんなヤンチャそうなイケメン覚えてないわけないし…
「あの…」
「ああ、俺はこう言うモンだ」
頭をフル回転させて誰なのかを考えている私の前に、彼は名刺を差し出した。
「……あ、頂戴します。……えっと、株式会社..舶来…の、毛利…さん?」
「そうだ。広告代理店の俺の会社、知ってるだろ?」
さも当たり前のように聞かれたけど…
「すみません、勉強不足で、…あの、初めて聞きました」
少しでも知ったかぶりをすれば鋭く聞かれそうな気がして、正直に答えた。しかも俺の会社って…
よく見れば名刺の名前の上には、代表取締役社長と書かれている。
天は二物を与えないと言うけど、二物も三物も与えられている人がここにも存在した!(後は信長とそのイケメン仲間たち)
「俺の会社もまだまだって事か、芸能界にいりゃあ、誰だってこの社名を聞いただけで態度が変わるもんだがな…」
「そうなんですね。本当、ごめんなさい」
広告代理店って、聞いたことあるけどどんな会社だっけ?
業種を聞いてもまだあまり分かっていない私に、毛利さんは言葉を続けた。
「まぁ、信長のお姫(ひい)さんなら知らなくても仕方ないか」
「お姫さん?」
「ああ、分かんねーよな。おひいさんってのは、お姫さんって意味だ」
「あ、いえ、その意味は…何となく分かりました。そうじゃなくて…」
信長のお姫さんってどう言う意味?