第30章 舞台挨拶
「ったく、逃げ足の速い奴。セナ、蘭丸には気をつけなって言ったでしょ?あいつは、あんたと社長の事を記者にリークしたくて仕方ないんだから…」
玲衣は悔しそうに舌打ちをする。
「あ、うん。でも、あんなに人懐っこく来られると疑えなくて…」
画面で見るアイドルスマイルが自分だけに向けられてるなんて、やっぱりガードも緩んでしまう。
「それがあいつの手口なんだってば!あんたと社長の間にバラされて困るような事はないとは思うけど、気をつけなよ?何もなくたって、煙を立てて火が起こるような事、平気でする奴もいるんだから…」
「うん。心配してくれてありがとう。気をつけるね」
蘭丸君が本当に同じ事務所の人達の情報をお世話にったと言う記者に流しているのかは知らないけど、玲衣が嘘をついているとも思えない。現に蘭丸君は、あまり知られていない私の交通事故の事をうまく聞き出して来た。
かと言ってあの後何か起きたわけでもないから、考えすぎかなと思って忘れていたけど…
「まさかね…」
胸の奥の方で何かが引っかかっていたけど、私はそれに気づかないふりをして、自分の部屋へと戻った。