第29章 突然の・・・
「いや、むしろそんな貴様も見てみたい。貴様は常に優等生だからな。あれこれ考えて己が我慢する方ばかりを選ぶ」
私の事、そんな風に思ってくれてるの?
それはとても嬉しいけど…
「そんな事は…ないよ?我慢はしてないし…、でも困らせるような事を言って信長に嫌われたくはないかな?」
大切に愛されてるって分かってる。けど、わがままを言って困らせて嫌われたらと思うと、どうしてもストップがかかってしまう。
「俺の思いを疑いすぎだ。俺はどんな貴様も受け止める、そして離さん」
私の言葉にふっと笑うと、逞しい腕で私を抱き寄せその中に閉じ込めてくれた。
ほら、飼い慣らされてるのは私の方。信長のくれる甘い言葉と態度を前にすると、私は途端に大人しくなってしまう。
「拠点を海外に移さないとは言ったが、これを機に海外に移住して貴様と一から始めるのも悪くはない」
「えっ?どう言う意味…?」
「織田セナとして、海外で一から始めても良いと言う事だ」
「え、それって……!」
「結婚するか」
「……は?」
時間にして僅か10秒ほどの会話だったけど、ものすごい濃い内容の10秒だっただけに、全くもって頭が追いつかなかった。
「えっと…」
「どんな貴様も受け止め離さないとはそう言う事だ。貴様は俺と結婚して織田セナになれば良い」
「けっ、けけけ、結婚っ!?」
急なワードに声がどもり、そしてひっくり返った。
「ふっ、驚きすぎだ」
信長はいつも通りに笑うけど…
「おっ、驚くに決まってるよ!結婚って…、私と信長がって、こと!?」
「他に誰がいる?」
信長は少しだけムッとした顔をした。
「俺は貴様をこの芸能界のトップに立たせてやるつもりだったが、世間が貴様に夢中になる前に俺が惚れて貴様のこの世界での歩みを遅くした。だが海外ならばそんな事は何の足枷にもならない。俺の妻として一から始めても貴様は必ず成功できる」
「海外で成功って…」
結婚の次は海外デビュー!?
パニック状態の頭には、さまざまな海外セレブたちの顔がブワッと広がった。