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あなたが教えてくれたこと【イケメン戦国】

第1章 ネットニュースの人





{選手の紹介をします。第一レーン.........}



テレビでは、インターハイ陸上女子100mの決勝がライブ放送されている。

紹介された選手が手を上げると観客からの歓声を浴びる。


画面に映し出される空は雲ひとつない晴天で、決勝に相応しく風ひとつない最高のコンディション。


本来なら、会場にいるはずだったのに..........


何故か私は、実家の神奈川県から遠く離れた九州の病院のベッドの上。



あの日、道路に飛び出した犬を歩道に戻そうと走り寄った私は、突然左折してきた車に跳ねられ、救急車で運ばれた。


幸い命に別状はなかったが、左足首を骨折して暫く入院する事になった。

もちろん、インターハイは欠場となった。



ベッドの横には、その日、事故の知らせを聞いて慌てて来た母が椅子に座って同じ画面を見ている。



「あっ、この子.......」

第三レーンで名前を呼ばれたのは、中学の頃からよく競い合ってきた子の名前。勝ったことも負けたこともあって、常に闘志を燃やしていた子の一人だ。



「..........すごいな、決勝に行ったなんて」


誰に言うわけでも無く、ただ口から溢れた。


私は別に、インハイに出られただけでもラッキーな位の実力で、あのまま事故に遭わなかったとしても、この決勝の舞台に立つ事ができる確率は極めて低かった。

でも、目の前で学校名と名前を呼ばれ、手を上げ歓声を浴びる彼女はとてもキラキラと輝いていて、私の叶わなかった夢のラインにたつ事ができるほどの努力をしてきたのだと思うと、尊敬と、悔しさと、やっぱり尊敬と、でも羨ましく思う気持ちが交差して、事故に遭ってから一度も流さなかった涙が止めどなく溢れてきた。


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