第26章 varlet
「セナ?」
階段の下には信長の姿が.....
「姿が見えんと思ったらここか。どうした?」
「あ、うん。ちょっと外の空気が吸いたくなって屋上に....」
「何も言わずに行く奴があるか。心配するだろう」
そう言いながら心配そうな顔で階段を登って来た信長は、階段の途中で私を抱き寄せた。
「信長は心配症だね」
いつだって、私の事を一番に考えてくれる心配性な恋人を抱きしめ返した。
「身体が冷えてるな。せめて暖かくしてから行け、風邪をひく」
「うん。それは私も失敗したって思った。外、寒かったよ...」
「鼻先は氷みたいだな」
おでこをくっつけて、鼻先を擦り合わせると、軽く口を食まれた。
「んっ、だっ、だから人前でキスは禁止....」
油断も隙もない悪戯な口を手で塞ぐと、簡単に掴まれその手にもキスされた。
「っ........」
「ここには誰もおらん、それに貴様はこうするのが手っ取り早く体温が上がる」
「ん......」
信長は楽しそうに口角を上げると、私に再びキスを落とす。
「んっ!」
信長の舌と唇は暖かくて、悔しいけど、信長の言う通りに身体は熱を持ち始め温められていく。
「っ、.........ん...........」
キスをすると、こんなにも絡む音と吐息が部屋に響くのだと、あなたとして初めて知った。
「んっ、の、信長っ、もう温まったよ?」
「ダメだ、まだ髪が冷たい」
「そこはさすがに体温では.......ちょっ、んぅ........」
髪の毛って、温かいとかあった?しかも体温で温められる所じゃないんじゃ......って、聞く気ないよね?
「っ..........はっ...............んっ....」
長く甘いキスは、私の焦りや羞恥心を取っ払って、大好きだという気持ちだけを残してしまうから、「もう、いいや」と、少しでも悩んだ事が溶かされていってしまう。