第26章 varlet
「んっ、信長...........」
甘えのスイッチの入ってしまった私は、信長の首に手を巻きつけて、もっと、と、キスを強請る。
好きだと言う感情は無限なんだと、信長を好きになって初めて知った。
これ以上好きになれないと毎日思うのに、毎日大好きが更新されていく。
「っ、そんなに煽るな、今ここで抱く事になるぞ」
唇を離した信長は、互いのおでこを寄せ合って、ふぅっと、息を吐いた。
「っ信長からしたくせに.....」
いつもいつも、煽ってくるのは信長なのに、その気にさせておいて簡単にストップをかけてくる。
「冷えた身体を暖める為だと言っただろう?それに、浮かない顔をしていたからな。何かあったか?」
心配性な恋人は、やっぱり私の様子がおかしい事に気付いていたようだ。
こんなにも、私の事を私以上に考えてくれてる信長が、私に隠し事などするはずが無い。
「これと言って何も無いけど、蘭丸君から信長の過去の相手の事たくさん聞いて、みんな綺麗な人ばかりだったから落ち込んだだけ」
でも、何故か犬の事は聞いてはいけない気がして、私は咄嗟に誤魔化してしまった。
「またそれか。いつも言ってるが、過去に愛した女も、これから愛していく女も貴様だけだ。俺をもっと信じろ」
不敵な顔をしたオレ様は、私のデコをピンっと弾いた。
「うん。信じてるし、信長の事、大好きだよ」
「ふっ、それはもう、何度も聞いた」
顔を崩して笑うと、優しく抱きしめられた。
その後、リビングへと戻った私たちはみんなとのパーティーを楽しみ、蘭丸君との会話も徐々に薄れて気にならなくなった。
憧れから恋に変わり、そして恋人同士になった私たちの関係はとても順調で.......、そんな二人の心を試される時が来るなんて、この時の私は考えもしてなかった。