第26章 varlet
「誰かいるのか?」
物思いに耽っていると、奥から人の声.........
暗闇からの声に驚いて返事を出来ずにいると、
「そこにいるの、セナか?」
タバコを片手に持った秀吉さんが現れた。
「秀吉さん?誰もいないと思ってたからびっくりしたぁ」
「悪いな。タバコ吸いに来てたんだ。お前はどうした?」
手に持っていたタバコを携帯灰皿にキュッと押し込み、秀吉さんはこっちに来てくれた。
「あ、私は.....ちょっと外の風に当たりたくなって.......でも寒すぎました。.....それより、秀吉さん、タバコ吸うんですね」
全然知らなかった。
「ん?ああ、息抜きにちょっとな」
「でも、こんな寒いところで吸わなくても.....」
喫煙所、家の中にも来客用に確か設けてた気がするけど.....
「気にするな。寒いけどここが一番眺めがいいし、今日のメンバーは俺しか吸わないからな」
「あれ?でも、社長もたまに吸うって前に......」
私は吸う所は見た事ないけど.....キスされた時の味を覚えてる.......
「信長様は、酒の席や接待の時だけ付き合い程度に吸っていたけど、お前と付き合いだしてからはやめたんじゃないか?」
「え?」
「それだけお前の事を大切にしてるって事だろ?」
秀吉さんはそう言うと、優しく微笑んで頭をポンっとしてくれた。
「秀吉さん.....」
「まぁ今だから言うと、まだ高校を卒業したばかりの、しかもうちのタレントであるお前と付き合うと信長様から聞いた時は、驚きのあまり倒れそうになったんだぞ?」
「そ、そうですよね.......、私もいまだに夢みたいで............」
本当に、夢ならば一生覚めないでほしい。
「何をしても、俺なんかが太刀打ちできるお方ではないが、お前と付き合いだしてからは、更に男らしさに磨きがかかって、しかも楽しそうで.....
まあ、もう少し人目を気にしてほしいがな」
「は、はい。気をつけます」
それに関しては、いつもご迷惑をお掛けしてごめんなさい。