第26章 varlet
「さぁ、詳しい事は私にも分かんないけど、顕如の親戚とか関係者とか?ただ間違った事は書いてないから織田プロとしても手の打ちようがないみたい。社長も一切の妥協は許さない人だから.....。まぁ蘭丸の事は気をつけな、あまり何でも話さない方がいいかもよ?」
「う、うん。ありがとう。気をつけるね」
犬の話から蘭丸君の事、そして顕如と言う名のフリーの記者......
突然いくつものニュースが自分の身に降りかかり、頭がぐるぐると混乱した。
「ちょっと、外の空気吸ってくる」
心配そうな玲衣は「一緒に行こうか?」と聞いてくれてけど、今は一人になりたい。
チラッと信長の方を見ると、光秀さんとケイティと歓談中。
気づかれていない事を確認した私は、屋上庭園へと向かった。
信長の家は、織田プロダクションのビルの最上階三階部分全てで、その屋上部分は綺麗な庭園になっている。ここでバーベキューをする事も出来ると言っていたけど、まだ私が来てからはしていない。
「寒っ!」
2月のビルの屋上は、冷たい風が吹き抜けて、簡単に体温を奪われる。
「ここはちょっと無理かな」
1分と立っていられそうもなく、今通って来たサンルームへと逃げ込んだ。
「うー寒かったぁ〜、凍るかと思った〜」
何も考えず外に出てしまったから、アウターも持たずで失敗した。
逃げ込んだサンルームの中には、ベルが使っていたであろう大きなペット用のソファがまだ置かれている。
夜の今、この屋上庭園は綺麗にライトアップされている。
芝生とウッドデッキで構成されていて、所々に大きなグリーンが植えられていて、滝も流れていてる。
きっと、忙しくて中々散歩に連れて行けないベルの為に作られた空間なんだろうけど、ここまで可愛がっていたであろう愛犬の話は、信長から一度も聞いたことが無い。
一度だけ、話の流れから犬の話をふったことがあるけど、何となく話したく無さそうな雰囲気だったから、それ以来私も話さなくなった。