第26章 varlet
心臓が、今までにないくらいドクドクと音を立てていて、耳に煩く届く。
「セナ?どうしたの?急に黙っちゃって。俺何か悪い事言っちゃった?」
モグモグとキチンを頬張りながら、蘭丸君は心配そうに私を覗き込んだ。
「あ、ううん、何でもないよ。ただちょっとドキッとしちゃっただけ」
「ふーん、でも信長様とセナって付き合ってるんでしょ?じゃあ隠し事なんてないから心配ないよね?」
「う、うん」
何だろう.....?蘭丸君の一言一言がものすごく刺さる.......
「ちょっと蘭丸!セナにちょっかいかけるのやめな!」
新しい料理を運んで来た玲衣が、珍しく蘭丸君に声を荒げた。
「ちぇっ!玲衣かぁ〜、怖いお姉さんが来ちゃった。セナまた今度ゆっくり話そうね。俺あっちでみんなと話してくるね」
蘭丸君は玲衣が苦手なのか、逃げるように行ってしまった。
「セナどうした?顔色悪いよ」
料理をテーブルに置く玲衣は、心配そうな目を私に向けた。
「玲衣......、大丈夫、何でもないよ」
蘭丸君がいなくなった事に少しほっとした私は、笑顔で玲衣に答えた。
「蘭丸に何を言われたか知らないけど、気を付けた方がいいよ。アイツ、顕如って言うフリーの記者と繋がってて、裏の情報を流してるらしいから」
「フリーの記者?」
「お金になる話題なら何でも記事にして週刊誌に売り込んでる最低な奴らしいよ。セナが来る前にも、この織田プロに所属していた子達が何人も蘭丸と顕如の餌食にされて、この織田プロとの契約を切られてるから」
「そうなの......?でもなんだってそんな事.....」
人懐っこくて、そんな子には見えないけど.....
「さぁ、よく知らないけど、顕如って記者が社長に個人的に恨みがあって、この織田プロを潰そうとしてるらしいって噂だよ」
「でも、なんで蘭丸君まで?下手したら蘭丸君だって契約切られちゃうんじゃ......」
信長がそんな事を知らずに見逃してるとも思えないけど.....