第26章 varlet
「私のパパがイギリス人でしょ?あの人、日本食に恋して日本にやって来たくらいの日本食バカだから、出汁とかうるさくてね、おかげで小さな頃から美味しいものには不自由しなかっし鍛えられたってわけ」
「なるほど......」
「アゴ出汁は美味いよな。最近飲んでねぇな。俺にもその時は飲ませろよ」
政宗も私たちの話を聞いて割り込んできた。
本当に料理が好きなんだな。
「よしっ、ローストチキン焼けたぞ。セナ、あいつらに持ってってやれ。熱いから気を付けろ」
「はい。......ぁつっ...」
綺麗な鋳物に入ったローストチキンと、玲衣の盛り付けた焼きリンゴを耐熱ミトンで持ってリビングへと向かった。
リビングでは、信長を囲んで談笑している一組が目に入った。
二人きりのこの部屋も好きだけど、こんな賑やかな空間も好きだな。
普段あまり見ない他の人と話して笑う信長の顔はやっぱり見惚れてしまうほどカッコよくて、目が離せない。
「セナ、そんな所で信長様に見惚れてないで、早く料理置いてよ。火傷しちゃうよ?」
オーブンから出て来たばかりの鋳物皿を片手に信長に見惚れていると、蘭丸君の急かす声が聞こえて来た。
「あっ、ごめんね」
ミトン越しとは言え、少し熱さを感じ始めた手から、ローストチキンをテーブルの上に置いた。
「わぁっ!これも美味しそう。ねぇセナ、取り分けて」
「うん。待ってね」
蘭丸君ってほんと人懐っこいな。まさにアイドル。
チキンをほぐして取り分けると、蘭丸君は美味しそうにそれを口に運んだ。
「美味しい!」
「ふふっ、美味しそうに食べるよね。私も食べる事大好きだけど、蘭丸君も好きなの?」
「うん。だぁーい好き。俺普段ロケ弁が多いし、自分では作らないから、こう言う手づくりに飢えてるのかな」
「そっかぁ、蘭丸君大人気で大忙しだから...」
アイドルってマルチに何でもこなすから本当に忙しそうだし、こうやって会うのもかなり振りだ。
「セナは仕事、最近どうなの?俺一度、セナとゆっくり話してみたかったんだよね」
「ありがとう。同じ寮生なのに、全然会わないから私も話せて嬉しいよ」
蘭丸君は、本当にテレビで見ない日はない程、ドラマ、バラエティ、CMと大人気だから....