第25章 貴方と温まる夜〜大晦日特別編〜
「このまま部屋に戻るか?」
この園内にあるホテルの部屋を取ってくれている信長は、意味深な笑みを浮かべる。
「うーーーーん、少しだけ、遊園地で遊んでもいい?」
カウントダウンイベントの今日だけは、深夜3時迄営業しているこの遊園地。信長とホテルの部屋で過ごすのも素敵だけど、遊園地と言えば、信長と私が本当の恋人同士になったきっかけの場所で、思い出の場所。今いるのは違う遊園地だけど、少しあの頃の様に二人で園内を遊んで過ごしたくなった。
「構わん。どうせ10時間後には飛行機の中だ。このまま遊び倒すか?」
信長も私の案に乗ってくれ、おでこにキスをしてくれる。
「飛行機って、そんなに早かった?」
「ここは6時には出る。9時には搭乗だ」
「えっ、じゃあやっぱり、部屋に戻る?」
私達は今日から五日間の南の島へと行く予定で、その休みを取るために、信長が昼夜問わず働き通してくれた事をよく分かってる。
「いや、飛行機の中で少し休むから問題ない」
「でも、.....」
「ふっ、どうせ部屋に戻っても寝はしない。貴様を抱き潰すだけだ。その方がいいなら戻るが、どうする?」
私の答えを分かっているのに、こう言う時の信長は意地悪だ。
「それは困るから、やっぱり遊園地で遊ぶ」
「なら行くぞ」
「うん!」
こんな風に、彼と2人でカウントダウンをして新年を迎える事になるなんて、昨年の私からは想像できない。
「私、去年の今頃は受験の真っ最中で、今頃もこたつの中で過去問解いてたなぁ」
本当に昨年は受験一色で、その中で、信長に勧められたBbのオーディションも控えていたから、受験生の強い味方である夜食も食べることが出来なくて辛かった記憶が......
「そうか、貴様は受験生だったな」
「うん。信長は去年のカウントダウンは何してたの?」
「俺か?..............覚えておらんな」
(絶対、嘘だ!)