第3章 専属契約
子供...........かぁ、
「何だ、本当の事を言われて気分を害したか?」
「そ、そんな事ありません。子供なのは本当の事ですから」
そして社長も、私の事をそう思ってる。
「くくっ、随分と素直だな。そこが魅力と言った所か。始めるぞ、目を瞑ってろ」
言われた通り目を瞑ると、すーっと顔に何かを塗り始めた。
18歳って、もっとずっと大人になってると思ってたけど、実際は全然子供で、自分のこの気持ちさえ持て余してどうすればいいのか分からないでいる。
「..........雑だな、もっとちゃんと手入れをしてやれ」
「はい?」
「お前の肌と髪の事だ。大方、大したケアもせず外を出歩いてきたんだろう、元々綺麗な肌と髪をしているが、傷んできてる。もっとしっかりと保湿とトリートメントをしてやれ」
「は、はいっ、頑張ります」
ククッと、またいじわるな笑い声が聞こえたけど、目を閉じているから表情は分からなかった。
でも態度とは違って、私の顔を滑る彼の指はとても繊細で優しくて、目を開けてアイラインとリップを引いてもらうと、私は全くの別人になっていた。
「................わぁ」
「どうだ、上手く化かしてやっただろう」
「はい。ありがとうございます。本当に、別人みたい」
頬に手を当て、まじまじと自分を鏡で見た。
鏡に映るのは自分だけど、自分じゃないみたいだ。寝不足で腫れぼったかった目も、目の下のクマも、カサカサだった肌も、魔法にかけられたみたいに無くなっている。
「嫌味を言って礼を言われるとは思わなかったが、まぁいい」
光秀さんはブラシを手に、私の髪をとかしはじめた。
「髪はどうしますか?信長様」
私に聞いてきたのかと思いきや、その質問は社長に向けられたもので、
えっ?社長!?(しかも光秀さんも信長様と呼んでるの?)
今日は撮影に来れないって昨日言ってたのに。
慌てて振り返ると社長がドアにもたれて立っていて、目が合った。
「っ.............」
瞬間、昨日の事が思い出され、気まずくて目を逸らした。