第23章 夏休み
「あ、あれは...........」
レシピ通りに作ったはずなのに、油で揚げている時に、中身が殆ど飛び出してしまった過去最大の失敗作.......
「ほぼ衣だけのクリームコロッケは初めて食べたな」
くくっと、思い出し笑いをしながら信長はグリルで食材を炙っていく。
「次は失敗しないもん」
取り分けられたオマールエビを頬張りながら信長から目を逸らすと、ライトアップされたプールが目に入った。
「後で、少しプールで泳いでも良い?」
夜だし、日焼けも気にしなくていいし.......
「そうだな、もう少し腹に入れたらいいぞ。貴様はよく食べる割に、痩せていくからな」
「だ、だからそんなに痩せてないよ」
あの水着を着ないといけないからできればもうご馳走さまをしたい。普段身に付ける下着よりも面積が狭いんだから.......
「とにかく食え!プールはそれからだ」
「は〜い」
地元の海や山の幸と、いつの間にか仕込まれていたパエリアをその後もたくさん取り分けられ堪能し、一日目の夜ご飯は終了した。
・・・・・・・・・・
着替えを済ませてテラスへ戻ると、既に着替えた信長はテラスのビーチベッドで本を読みながらお酒を飲んでいた。
「............お待たせしました」
視線を本から私に向けた信長は、
「....................何の冗談だ?」
不愉快そうに目を細めて思った通りの反応。
買ってもらった水着の上に、事前にこそっと買ったミニワンピースの様なカバーアップを着て現れたからだ。
「夜は.....冷えるかな?って思って...」
私も苦しいと思いながらも言い訳をする。
「........そうか」
信長は静かに本をテーブルに置いて立ち上がると、私の元へ来て抱きしめた。
「?どうしたの?」
もっと怒ってくると思ってたから拍子抜けしてしまったけど、不思議に思いながらも抱きしめ返した。
「寒くなければ、いいんだな?」
耳元で艶のかかった声が私に確認すると、
「えっ?............あっ!」
信長の手がカバーアップをめくり、私の背中を撫でた。