第23章 夏休み
この島の一日は東京に比べて長い。
7時を過ぎても明るかった島もようやくサンセットとなり、目の前のプライベートビーチを少し歩いた後、私達はテラスに出て心地よい風が吹く中BBQを楽しんだ。
ヴィラの中は本当に二人だけのプライベート空間で、BBQをしながら久しぶりの穏やかな食事に全てが解放されていく。
「美味しい!料理もできるなんて天才!」
運ばれてきた様々な食材を、信長は手際良く捌いて串に刺して焼いていく。
「敬太郎に無理やり教え込まれたからな」
「ふふっ、ケイティは信長のお母さんみたいだね」
「そうだな。口うるさい、髭の濃い母親だが感謝している」
「でも、こんなに料理できるなんて全然知らなかった。何で教えてくれなかったの?」
これでよく、私のあの手料理を毎回食べてくれてるなぁ。
「料理など、誰が作っても同じだと思ってたからな。生きていくための手段として敬太郎には教え込まれたが、誰かに食べさせたいとか、誰かの手料理を食べたいと思ったのは貴様が初めてだ」
少しずつ空も暗くなり、テラスに灯されたライトの光を浴びながら、信長は綺麗な顔で私に答える。
「じ、じゃあ信長の手料理を食べたのはもしかして私が初めて?」
信長の初めてを私が!?
「いや、悪いが敬太郎には何回かある」
そうですよね......
「ケイティは信長の手料理を食べて何て?」
「あいつは、いつも泣くから鬱陶しい。作る気が失せたからそれ以来作ってない」
ケイティらしいし信長らしい。
一瞬少し嫉妬したけど、ケイティの信長への愛情の深さが分かり、私も嬉しくなった。
私にとっても大切な存在のケイティ。この旅行も凄く喜んでスケジュール調整してくれて.........
この島の美容品を沢山買って帰ろうと思った。
「私のご飯......いつも食べてくれてありがとう」
いつも上手いと言ってくれるし、失敗した時も笑いながらも悪くないと言って完食してくれる。
「貴様の飯は色々な意味で楽しみだ。最近はそうだな.....クリームコロッケだな」
悪戯な笑顔が私に向けられる。