第23章 夏休み
横を向くと、PCを打つ手を止めて、声を抑えて笑う信長。
「えっ、何?どうしたの?」
「ガイドブック一冊でそんなに楽しそうにできるとは、安上がりな奴だな」
「えー、だって初めて行くんだもん。折角だから色々見たいし食べたいし、信長と行く初めての旅行だから沢山思い出も作りたいし」
写真とか、一緒に撮れるかなぁ.......二人で写った写真はまだ週刊誌とかのゴシップ記事の写真しかないなんて嫌すぎるし......
「写真、一緒に撮ろうね?」
「そうだな」
ちゅっと、私に軽くキスをすると唇を少し離し、信長はまた笑った。
「っ、.........人前では禁止だよ!」
う〜ドキドキする〜
「却下だ。旅行の間は解禁しろ」
私の横髪を梳く様に手を差し込むと、
「ん、」
優しくて甘いキスをされた。
こうして飛行機の中での甘い時間は過ぎていき、私達は南の楽園へとやって来た。
荷物を取ると、信長は手配してあった車へと乗り込み、先ずは宿泊先へと向かった。
「わぁっ!風が気持ちいいね。やっぱり東京の風とは違う気がする」
窓を開けると、少し湿度は高いけど、南国の匂いのする風が吹き込んできた。
「余り顔を出すな、危ないぞ」
信長は心配そうに、繋いだ私の手を引っ張って窓から離そうとする。
「そう言えば、どこに泊まるの?ガイドブックに載ってるかなぁ」
ここだと言って信長にホテルの名刺を渡されガイドブックで調べてみた。
思っていた通り、それは私では泊まる事は出来ない高級リゾートヴィラ。
しかもここに行くには私が渡りたいと思っていた大橋を渡って行くらしい。
「すごい素敵........しかも大橋も渡れるなんて」
「ここならマスコミに騒がれる事もないしゆっくりできるだろう」
「信長は、前にも来た事があるの?」
さっきの車の手配といい。このヴィラの事と言い、何だかこの島の事を良く知ってるみたいに見える。
「...........前に知人に誘われて2、3度来た事があるだけだ」
何とも信長らしくない歯切れの悪い答えに、女の人と来たのだと女の勘がピンと来た。