第22章 Etigo
打ち上げ会場はホテルの宴会場だったから、私はそのまま手を引かれてホテルのエレベーターへと乗った。
「あ、私の部屋は8階だよ」
8階のボタンを押そうとすると、その手を止めて信長は10の数字を押した。
「10階?」
「貴様の部屋を引き払ってそのまま俺と同じ部屋を取った。荷物ももう部屋に届いてるはずだ」
「えっ?今日一緒に泊まれるの?」
「ああ、貴様がこんなメッセージを送ってきたからな」
信長はそう言うと、私が昨夜送ったメッセージの画面を開いて見せて来た。
「あっ、それ....」
私が悩んだ末に勢いで送信ボタンを押して送ったメッセージ。
「寂しいと書いてあったからな。返信するよりも直接俺の気持ちを伝えてやろうと思ってな」
信長はイタズラな顔で私を覗き込むとちゅっと、触れるだけのキスをした。
「っ........」
顔が熱くなるのと同時にポーンと音が鳴り、エレベーターは目的の階に着いた。
部屋に入ると、私のいた1人用の洋室とは違って温泉旅館らしい綺麗な和室のお部屋が広がっていて、既にお布団が二組敷かれていた。
「ふっ、用意がいいな」
信長は笑うと靴を脱いだ私を抱き上げた。
「あの、会いに来てくれてありがとう。本当に会いたかったから嬉しい」
2日ぶりの信長の匂いが嬉しくて、首に抱きついた。
「貴様がメッセージを送ってきたのは初めてだからな。驚かせてやろうと思って、出張先から戻る飛行機の行き先を羽田から北陸経由に換えて来た」
「ふふっ、メッセージ、送った事なかったから緊張したんだよ?」
「あー言うのは変わらず好かんが、貴様からのは嬉しいものだな。これからも遠慮せず送れ。その度に、貴様の体に返信を刻んでやる」
静かに布団へと下され組み敷かれた。
「抱けなかった分、しっかり抱かせてもらうぞ」
「あ、明日の朝起きられる位でお願いします」
「ふっ、約束はできん」
「んっ......」
ニヤリと笑い優しく唇が重なれば、あっという間に何も考えられなくなった。
謙信さんや会場のみんながどうなったのか気になるし、ケイティをあの場に置いてきてしまった事にとても罪悪感を感じるけど、今は信長がこうして会いに来てくれたことが嬉しい。
「大好き」
大好きな彼に腕を巻き付け、その夜は与えられる幸せをたくさん感じさせてもらえた。