第22章 Etigo
「のっ、のぶ、じゃなくて社長!?」
何でここに!?
「織田....信長......」
優しく笑ってくれていた謙信さんの顔があっという間に不快な顔に変わった。
「セナが世話になった。仕事が終わったのなら酒の席に未成年は不要だろう。連れて帰る。セナ行くぞ」
信長は強引に私の肩を抱いて会場から出て行こうとする。
「ちょ、ちょっと待って社長、私まだ打ち上げの最中で」
他のスタッフさん達にも挨拶できてないのに。
「ダメだ、挨拶したいのなら今すぐしてこい。帰るぞ」
「えーーー、」
残念そうにごねていると、謙信さんが私の手を掴んだ。
「セナ、その男の言う事を聞く必要はない。もう少し俺と話をして行け。ただのプロダクションの社長が偉そうにタレントを縛り付けるな」
「なに?」
これには、信長も不快そうに返す。
「いくら自社タレントとは言え、呼んでもいないのに勝手に現れて連れて行こうとするな。噂通り、勝手な奴だな貴様は」
謙信さんも負けてない。
俺様なイケメン同士の対決に、周りも固唾を飲んで見守る。
「ふんっ、貴様は阿保か。セナは俺の女だ」
そして、信長はいつも通り我が道を突き進む返答をする。
「.............なにっ!?本当か、セナ?」
私の手を掴んだまま謙信さんが驚いたような顔で私を見る。
『撮影期間中、君が信長さんの彼女だって絶対に気づかれないようにしてほしい。信長さんが見に来たりすることもNGでお願いしたい』
佐助君に気づかれるなとは言われたけど、これはもう誤魔化せる範疇をとっくに超えている。
それに、誤魔化すなんてしたくない。
「はい。付き合ってます。私の大好きな人です」
「っ..........」
何だか、裏切られたような謙信さんの顔。
「分かったらその手を離せ。いつまで人の女の手を掴んでいるつもりだ」
信長は引き剥がすように私の手を掴んで引き寄せた。
「セナ帰るぞ。早く挨拶を済ませてこい」
「は、はい」
これ以上信長の機嫌を損ねるととんでもないお仕置きが待ってそうで、私は慌ててみんなに挨拶を済ませ、信長と2人会場を後にした。