第22章 Etigo
「私二人に挨拶してくるね」
席を立ち、二人のいるテーブルの方へと向かった。
「あの、謙信さん、信玄さん、お疲れ様でした」
同じテーブルに座って、全く違う飲み方をしている2人に声をかけた。
「ああ、お疲れ」
謙信さんはそう言うとクイッとお酒を一気に飲み干す。
「ああ、姫お疲れ。良かったらこっちに来て一緒に飲まないか?」
信玄さんはフェロモンを漂わせながら誘ってくるけど、周りの女の人たちの視線がとても痛い......
「あ、私はまだ未成年でお酒は飲めないので」
「そうかぁ、それは残念。君が成人したらまた誘うよ」
信玄さんは色気たっぷりに笑うと、また女の人たちと飲み始めた。
「セナ」
「はい」
謙信さんが私を呼んだ。
「お前は、中々いい声で歌う」
急なお褒めの言葉。
「えっ、ほんとですか?」
「ああ、音程はまだ微妙だがそれは訓練次第で何とでもなる」
「ありがとうございます」
歌は、正直あまり得意な方ではないと思ってたからすごく嬉しい。
「日本海は、寒かったか?」
「あ、はいっ。久しぶりに歯が鳴りました」
本当に寒かった。
「なのに、一言も愚痴を漏らさず俺の曲を口ずさみながらよく頑張ったな。お前は中々に根性がある。さすが佐助の幼なじみだな」
ふっ、と顔を緩めて謙信さんは笑った。
それは、私が謙信さんに会ってから初めて見る笑顔で、何だか少しだけ認めてもらえたような気がして嬉しかった。
「こんな素敵なMVのメイキングに参加させてもらえて私も幸せでした。ありがとうございました」
「お前さえ良ければ、俺がプロデュースしてやる。歌手になる気はないか?」
「えっ?あの........」
「お前は女特有の嫌な所がなくて面白い。どうだ?」
どうだと言われても......それに、女特有の嫌な所って、どんな所?単に女子力が低いって事だろうか?
「あの、私..」
「悪いが、セナを歌手にする予定は今の所ない」
......................え!?
突然私の背後から聞こえてきた聞き覚えのある大好きな声.............
もしかして.........