第22章 Etigo
目覚めたら既に朝で、慌ててスマホを見たら返信メッセージはなかったけど、逆にそれが信長らしくて「やっぱりね」とスマホに笑ってしまった。
昨日同様に衣装を着てヘアメイクを済ませ海岸へと行くと、既にメンバーの撮影が始まっていた。
ピアノとドラムは演奏に支障がない程度に海に入っていて、その上で謙信さんと信玄さんが演奏をしている。
佐助君と幸村は、足まで海に入り演奏をしている。う〜寒そう。
でも、やっぱりプロだなぁ。
今撮ってる全てを使うわけでなく、ほんの一部分しか抜粋しないのに、そこだけを撮るわけでなく、全演奏をして良いものを作り出す。
道路を通行する人には立ち止まらず通り過ぎてもらうように促したって、そんなの無理に決まってる。気づけば、ホテルの部屋からも、高台からも沢山の人が見学していて、彼らの音楽に耳を傾ける。見た目も最高なら、音楽はもっと最高。
Etigoは、本当に日本一の最高のロックバンドだ!
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「「「おつかれさまでしたーーーーー!!」」」
グラスのぶつかり合う音が響き渡る。
撮影が無事終わり、予備日までずれ込まなかった私たちは、そのままホテルの宴会場を借り切って、打ち上げをする事になった。
大人も未成年もいるけど、席を分ける事で、お酒も出ているこの打ち上げ会。
謙信さんは、さっきからひたすら日本酒を飲んでいる。
「謙信さん、すごくお酒強いんだね」
未成年席に座る私と佐助君と幸村は、遠巻きに謙信さんと信玄さんを見る。
「ああ、ここだけの話、俺も最初はこの表情筋が災いして未成年だと思ってもらえず、日本酒を浴びるほど飲まされて大変だったんだ」
「そ、それは大変だったね」
謙信さんから視線を外して横を見ると、今度は信玄さんが女の人に囲まれて、スイーツを食べながらお酒を飲んでいる。
「信玄さんは、すごく女の人に優しいよね。なんかモテるの分かる気がする」
「ただの女好きだろ!って、また甘い物ばっか食べやがって.....」
「幸村は信玄さんの本当の弟みたいだね」
撮影中もすごく仲が良かったし。
「ただの腐れ縁だ。あの人目を離すとすぐ調子に乗るから」
「ふふっ、大好きなんだね」
「そんなんじゃねー」
ぷいっと幸村は照れてそっぽを向いた。