第22章 Etigo
「何だ佐助知り合いかよ?」
ぶっきらぼうな物言いで、佐助君の隣のイケメンが声を掛けた。
「あぁ、セナさんは俺の同級生で、小中が一緒だったんだ」
「へぇ、佐助にこんな美人な同級生がいたとは知らなかったな」
今度は体格の良い男性が佐助君達の会話に割り込んで、私の前にズズッとで出てきた。
「俺は武田信玄だ。この後よかったら美味しいスイーツでも食べにいかないか?」
私の手を取りいきなりナンパをしてきた。
「い、いえ、結構です」
「あら、私はこの後空いてるわよ。どう?」
そこへケイティがすかさず声をかける。
「い、いや、君も十分魅力的だが遠慮しておくよ」
男性は優しく微笑みながらも、佐助君達の後ろに下がって行った。
何だか、憎めないイケメンだ。
「おいっ、いつまでそこで無駄話をする気だ。さっさと始めるぞ!」
気づけば、謙信さんは既に椅子に座り、いつまでも立ち話をする私たちを睨み見ていた。
私達は気を引き締め直し、席へとつき、自己紹介をした。
今大人気のロックバンドEtigo(エチゴ)は、同じ大学に通う仲間だった上杉謙信(ヴォーカル)さんと武田信玄(ドラム)さん。その信玄さんの後輩である真田幸村(ベース)さんの3人で結成され、その後、幸村さんと同じ高校に通う佐助君(ギター)が加わり今のバンド形態となったそう。
楽曲のほとんどを謙信さんが手掛け、メディアへの露出はなく、彼らの姿を見ることができるのはライブとミュージックビデオの中だけ。
だからこそ、ミュージックビデオの制作に彼らはとても力を入れていて、そんな大切な物に出演させて頂ける事がありがたく。身の引き締まる思いだった。
「撮影は、予備日を入れて北陸で3日間だ。こっちが大まかな流れのプロットと新曲だ。しっかり頭に入れて世界観を作り出してこい」
今言った物をテーブルの上に広げて謙信さんが威圧的に説明をする。
「はい。頑張ります」
信長もかなりだけど、この謙信さんもかなりな俺様だと見た。
「話は以上だがお前.....最近何か変わった事があったか?」
「はいっ?」
会話の流れとは全く違う質問に聞き返してしまった。