第20章 格差
映画の内容は、はっきり言って好きなジャンルではなかったけど、信長の演技力の高さに改めて感心してしまった。
それに........あの濃厚な濡れ場........
この女優さんは今では大女優の仲間入りをした有名な人だけど、この映画では惜しみなく裸体を晒していて、信長との体当たりの演技は本当に抱き合っているんではないかと疑いたくなる程だ。
「うーーーなんか嫉妬しそう....」
演技力が高すぎるのも問題だ。信長が本当にあの女性の事を好きだった様に思えてきて、胸がチクチクしてきた。
悶々と膝を抱えていると、玄関の鍵がガチャリと開く音がした。
(あっ、帰って来た)
主人を待つ犬ってこんな気持ちなんだろうか?
信長が帰って来ると、嬉しくていつも玄関まで全力疾走してしまう。
「お帰りなさいっ!」
そして、犬にも負けないほど全力で飛びつく。
「どうした、そんな犬みたいに」
私を優しく腕に閉じ込めて、信長は意地悪な言葉を言う。
「ちょっと.....嫉妬してたから....」
「嫉妬?」
「さっきまで、信長が最後に出た映画観てたの」
「は?あれを見たのか?.........あれは、貴様の様な子どもが観ていい内容じゃないだろう?」
分かっていて、わざと信長は私を覗き込んだ。
「むぅ!子供じゃないもん、もう19だもん」
そんなお子ちゃまに手を出しているのは誰だ!
「ふっ、そうだったな。俺を惑わす立派な大人の女だ」
「ん......」
当たり前にキスが落とされ、抱き上げられた。
「信長は、もう演技とかはしたくないの?」
彼の寝室に連れられて行く中、私は疑問に思った事を聞いてみた。
「........元々、親父の残したこの会社の借金を返す為の手段としてやっていただけだからな。それに、人にあれこれ指図されるのは性に合わん」
何とも信長らしい答え。