第20章 格差
夜になり、カフェで言われた通りに彼の部屋で彼の帰りを待つ事にした。
初めて来た頃よりも大分この部屋の広さや雰囲気にも慣れて、最近は勝手にキッチンも借りて夜ご飯を作っている。
彼の部屋は毎日家政婦さんが入って掃除をしてくれているらしくとても綺麗だ。
今夜は食事は別だと言われたから、力を抜いて超簡単な物を胃に流し込むように夕飯を済ませた私は、彼の部屋のソファに座りテレビをつけた。
彼の部屋のテレビはどんな番組や映画も見放題で、実は密かな楽しみの一つ。
彼が戻るまで、見たかった映画や見逃したドラマを見ながら彼を待つ事ができる。
そして今日は、今まである理由で見られなかった映画を見る予定で......
「えっと、検索、検索」
映画のタイトルを入れてサーチすると、お目当の映画が出てきた。
「これこれ。あぁ〜実物もいいけどこれもカッコいい!」
画面に映るのはもちろん信長。映画のトップ画面の画像の彼は、今の私と同じ歳の頃の彼。
この映画は、日本だけでなく海外からも高い評価を得ていて、国内外の映画祭で信長は様々な賞を受賞した。そして同時に、これが彼の最後の映画となった。
当時まだ中学生だった私はこの映画を見る事ができなかった。その理由はR18指定だったから。
でももう19歳だし、.......観てもいいよね?と、勝手に今夜解禁する事にした。
映画は、大きな反社会組織の下っ端として働く青年と、若頭の幼妻との禁断の恋の物語を描く。
ダメだと分かっていても惹かれ合う二人.....やがてその関係は若頭の知る所となり、青年は敵対する組長の命を狙う鉄砲玉になる様命じられる。
そして二人は逃げる道を選び、逃避行の旅が始まる。
若頭の差し向けた組の者を殺しては逃げる二人。追い詰められた二人は狂ったように体を重ね求め合う。
ついに逃げ場を失った二人は最後は死を選び、息絶える瞬間まで抱き合い求め合い物語はエンドを迎える。
「..........な、なんか.....凄い映画だったな........」
文字通りR18指定な内容の映画に、観終わった後も暫くはボーッとしてしまった。