第20章 格差
それに、ここでみる彼は私と一緒にいる時の彼とは違い仕事モードの彼で、その真剣な表情を垣間見る事ができて、また一つ彼の事が好きになった。
「な〜んか、セナと社長の歌、書きたくなってきた」
「えーっ!暴露ソングとかはやめてよ?」
「いいね、それもアリかも。あっ、私ライブの時間だから今日はここまでなんだ」
「うん、今日はどこ?」
「今日はライブ配信だから、このままスタジオ。じゃあまたね。お疲れ」
「お疲れ様。頑張ってねー」
玲衣の歌は、何度も路上ライブに聞きに行っている。
パワフルでよく通る声が印象的で、何よりも、玲衣の容姿に振り返らない人はおらず、道ゆく人は皆足を止めて彼女の作り出す世界観に惹きつけられていく。
それでも、中々音楽だけで食べてはいけないのが現実だけど、玲衣の中にある歌への情熱は本物で、私はいつもいい刺激をもらっている。
チラッと彼のいるテーブルの方を見ると、まだ相談を受けている最中。
真剣に話を聞きそれに答えている彼はやっぱりカッコよくて、今更ながらに何故私と付き合ってくれているのかが不思議に思えた。