第20章 格差
正直に嬉しい。
けど、スキンシップが半端ない!
初めて来てくれた時は確か、「その格好も似合うな」と褒めてくれて嬉しかった。
その次は、社長室にコーヒーとラテのオーダーをもらいデリバリーしたら、
「それは貴様のだ、飲んで行け」
と言われて、その嬉しさにじんわりしたのも束の間、彼の膝の上に座らされ抱きしめられ、危うく隣の部屋へと連れ込まれる所だった。
この間の人が少ない時間は、顎を持ち上げキスしようとしてきたから、
「外でのキスは禁止でしょ!」
と、なんとか阻止したけど、信長の事が大好きな私に彼を拒み続ける事は至難の技で、さっきみたいな早技も、もう嬉しいが勝ってしまっていて防ぎようがない。
それにしても.....
カウンター越しに彼を見ると、沢山の人が信長に寄って行き話しかけている。
信長の仕事の事は全く分からないけど、ケイティいわく、この会社は対外的な役職はあるけれど、基本はフラットである事を心掛けているため、担当者が社長へ直談判する事は良しとされている。
ただ社長業務は多忙で中々捕まらないため、こうやって信長が社内のカフェに来る事を待ち伏せし、色々な業務内容を相談するのだ。
カフェに来る事は休憩を意味する為、最初の頃は秀吉さんが社員達を止めようとしていたけど、信長が良いと言った為、それ以来どんどん相談する人の数が増えて、信長は多分全然休息にはなっていない。
「カッコいいな......」
自然と口から漏れた言葉に玲衣が飛び付いた。
「よくそんなに好きでいられるね。そろそろ飽きるでしょ?ホント信じられない」
「全然飽きないよ。大好きだもん」
何年ファンでいたと思ってるのか.......それに、こんな風に甘やかしてもらえるまでにどれだけ辛い時間を過ごしたか。
それでも....あの辛い日々があったから、今の私たちがある。
憧れが恋に変わり、愛に変わって、もっともっと彼の事が好きになった。
初恋は実らないと言うけど、そんな事はなかった。
小学生の頃、彼の走る姿に一目惚れをしてから6年間。ずっと彼しか見て来なかったし、今も彼しか見えないけど、好きな気持ちはどんどん膨らんで行く。