第2章 XOXO
「ごめんなさい。あの、これ........」
ショックを隠す様に抱えた紙袋を社長に見せた。
「着てみろ」
「え?」
「明日の貴様の撮影には付き合えん、似合うかどうかを見てやる、着て見せてみろ」
「あの、違うんです。私、こんな高価な物受け取れませんって言おうと思って........」
「聞いてないのか?これは貴様への引っ越し祝いだ」
「でも、分不相応っていうか、こんな高価な服着たこともないし」
「だから着てみろと言っている。似合わない時は返してくれれば良い」
「でも.....」
「つべこべ言うと無理やり脱がして着せるぞ、いいんだな!」
「やっ、だめ!でも.....」
ここで着替えろって事?
「ふっ、ここで着替えろとは言ってない。隣の部屋で着替えて来い」
くいっと、彼が顎で指し示した隣の部屋で、完全に彼のペースにのまれた私は、言われるがまま、袋の中の服に着替えた。
・・・・・・・・・・・
「着替えました」
隣の部屋のドアに隠れながら社長に声を掛けると、ぷっ、と笑いながらこっちに来て手を引かれた。
「わっ!」
履き慣れないヒールを履いていた為、突然手を引かれ耐えられず足がよろけて、ボスッと社長に胸に倒れ込んでしまった。
「っ...........」
一瞬、自分の中の時が止まった気がした。
頬に感じるのは、鍛え込まれた逞しい胸板の感触と、大人の男の人の匂い。
ドキンッドキンッ
「っ、ご、ごめんなさい」
慌てて体を離そうと社長の胸を両手で押したけど、
グイッと予期せぬ力に背中を押され、再び社長の胸に顔を埋める事になった。
「えっ!な、なにっ?」
ドキンッドキンッと自分の胸の音が煩くて考えに集中できないけど、これって、もしかして抱きしめられてる?
ドキンッドキンッ
ど、ど、ど、どうしよう。どうすればいいの?
ドキンッドキンッ
あぁ、心臓うるさい!考えられないよ。
こー言う時は抱きしめ返すの?いやいやそれは恋人同士がする事でしょ?じゃあこの状態は何?
社長の両腕は間違いなく私の背中にあって、抱きしめられているのは間違いなさそうだ。
「................セナ」
パニック状態でいると、低くて心地良い声が耳元で聞こえた。