第19章 オレ様と私
「多少焦げがあっても構わん」
信長もベッドから起きて、私を背中から抱きしめながら、鍋の中を覗いて来た。
「う、うん。うっかりしてた。ごめんね。下の方だけ取り除けば多分大丈夫だと思う」
器に焦げてない部分だけをとりあえず移した。
「2人分にしては量が多いな」
「あ、うん。今夜から家康にお裾分けしようと思ってたから、多目に作ったの」
「............はっ?どうして家康の名前がここで出る?」
「だって、私が映画の撮影サボったせいで家康の仕事が増えちゃったって聞いたから、お詫びの印にせめて好きな物を作って差し入れてあげたいなと思って」
「貴様、それを家康に食わせるつもりか?」
「うん、辛い物が好きだっていうから今日は鶏肉のワサビ煮にしてみたんだよ。美味しくできてるかちょっと食べてみて?」
お箸で小さな鶏肉のかけらを取って食べてもらおうと後ろを向いた。
お箸を彼の口に持って行くけど、何故かむすっとして口を開けてくれない。
「あ、ワサビ好きじゃなかった?」
食べたくないなら仕方がないと思って自分の口に入れた瞬間、
「んぅっ!」
物凄い勢いで唇が重なり舌が侵入して来て、味見用の鶏肉を奪って行った。
「な、な、何?」
急すぎにもほどがある。
「オレの飯を勝手に食うな」
「は?」
「家康に食べさせる事も許さん!」
「どうしたの急に?それに、こんなに食べられないでしょ?」
「貴様の作ったものは全て食べると言っておる、つべこべ言わずに飯にしろ!」
そう言って、彼は不機嫌にローテーブルの前に座り込んだ。
..........何て........亭主関白な!
でも.........
(もしかして......やきもち妬いてくれてる?)
そう思うと嬉しくなって、作業を止めて彼の横にピトッとくっついて座った。