第19章 オレ様と私
セナ程のスタイルの女は中々いない。
モデルとしては小柄だが、顔が小さく九頭身のセナは普通にしていても目を引く。
陸上競技のあの露出度の高いユニフォームを着て、よく今まで無事で済んでいたなと思う位だ。
「あの、元々バイトはしたかったんです。中々時間が合わなくて諦めてたんですけど、このバイトだと空いてる日の空いてる時間だけでもいいから、急なオーディションが入っても大丈夫だし...」
「却下だ」
「えっ、何で?」
「本職が疎かになるのは許さん。それに、金に困っているなら何故俺に言わん」
あのような格好で輩達の好奇の目に晒されるのは耐えられん。
「だって......困ってるって言ったら、信長何でもしてくれそうだから....」
「当たり前だ、好きな女が困っていて助けん筈がないだろう?」
「でも、....それが当たり前になっちゃうのは嫌なの」
「は?」
ベッドに座った俺の前に立ち、セナは俺の両手を握った。
「信長は何でも出来るし凄い人だからこそ、私もそれにふさわしい人になれるように頑張りたい。今でも甘やかしてもらってるのに、これ以上甘やかされたらダメな気がして....」
「俺としてはもっと貴様を甘やかしたい位だが、貴様の言いたい事も分かる。だがあのバイトは却下だ」
「だから、何で?」
俺の手を握るセナの顔が少しムッとなる。
この表情も可愛いが、こればかりは俺も許してはやれん。
「今日、偶然貴様を見たが、あのような露出の高い服を着るのは許さん」
「えーっ!陸上の時に比べたら全然だよ?なのにダメなの?」
「ダメだ。芸能の仕事での露出ならある程度までは許すが、普段の生活で貴様の肌を見ていいのも触れていいのも俺だけだ」
「...............っ」
顔を真っ赤にして反論できなくなったセナの手をそのまま引き寄せて、再び膝の上に座らせた。
「何か社内で貴様が出来る仕事がないか敬太郎に探させておく。それまでは俺に甘えろ。いいな」
「うん、........」
まだ、セナの顔は完全に納得した様には見えなかったが、
「交渉成立だな」
「ん、.....」
これ以上反論できない様、柔らかなセナの唇を塞いだ。